のぞき!ふぉ。

「ハッ、ハッ、ハッ––––」

 動物じみた荒い息遣いをする平手の瞳の奥には、欲望と絶望の混沌とした色が広がっていた。オーディションで見た、純粋で輝かしい少年のような瞳の面影は、もはやない。
 いつ壊れてもおかしくなさそうな危うさが、女にはたまらないのだろうか。現に私は、凄まじい劣情を催していた。

「ちょっと待って……」

 ねるは平手から離れると四つん這いの姿勢になった。

「これ好きなの……」

 後背位の体位をとって、平手を誘う。

「来て、てち……あぁッ!」

 ずぼり、と一気に挿入った。
 興奮が抑えきれない様子の平手は一気に若竿を打ち込んで、激しくピストン運動をはじめた。たまらなく気持ちよさそうに、眉間にしわを寄せながら腰を振っている。
 ねるはシーツを鷲掴みにしながら、甘い声を上げて喘いだ。
 ずぼずぼ、と平手の若竿が挿し入れするのがくっきりと見える。

「やばい、こうするの初めて、なんかすごくエロい……んんっ!」

 平手は全身をがくがくと震わせると結合を解いて、ビュッビュルルッと若竿から一番擦りをほとばしらせた。一回だけのみならず、何度も射精を繰り返した。
 ねるの背中が、平手が射精した大量の精液で汚れる。

「ううっ、ねる……いっぱい出ちゃった、よ」

 ねるを仰向けに寝返らせた拍子に、べちょっと濃厚な精子がベッドに汚らしい音を立てる。思わずしかめ面を浮かべた私を他所よそに、二人は二回戦に挑んだ。

「ねる、すごくエッチで……私、もう……」

 射精したばかりだというのに、平手の若竿はギンギンに勃起させて亀頭は紅くなっていた。間髪入れず、ねるを貫いた。

「ああん、てちぃ、気持ちいぃ! ああっ!」

 私がいままで相手してきた男性たちとは比にならないくらいの精力っぷりが、本能的に女の劣情を掻き立てるのだろう。
 嫉妬と羨望と欲求が私の中を高速で駆け巡り、頭がクラクラとしてきた。
 私の指先が我慢しきれずに、恥骨の上でうねり動いている。

 浮気しても抱いている女を、抱いていない女を、発情させる。牡としては優秀だろう。そんな平手が、憎い。実に、憎い。
 もちろん、ねるにも言えることだ。牡の魅力を引き上げる、彼女の雌の魅力も憎い。憎くて仕方ない。
 優秀な牡と牝のぶつかり合い。
 センターとして負け、二番手としても負け、さらに。女としても負け––––。

 ズボンの中に手を突っ込んで、挿れたい衝動に駆られた。
 顔は涙でびしょ濡れ、股間は愛液でびしょ濡れ。惨めだった。
 ギシギシと音を立てて悲鳴を上げているベッドと同じように、私の心も悲鳴をあげていた。
 彼女たちの情交を直視すればするほど、下半身は狂おしいほど切なくなってしまう。
 喉がカラカラに渇いていくのを感じた。

シたい。猛烈に、シたい––––。

 すっかり存在を忘れていたこいつ––––志田が呆然として私を見ていたのに気付く。股間の上でもどかしげに動く私の手に、目をまばたかせている。

(何見てンの、好きな人の浮気現場にムラムラしてる私が、面白い?)

 悔し涙が一気に溢れ出した。

(ふざけんなッ!)

 たまらず、こいつにしがみつく。志田は驚いたのか、ぴくりと肩を震わせたが、間を置いて抱きしめ返してくれた。
 志田の手が私の頰を撫ぜたと思うと、親指で涙を拭ってきた。

(意味がわからない。それは、なに?)

 志田の眉尻が酷く下がり、目は伏せている。なんでか、申し訳なさそうな表情だ。

(優しさをアピールしてるつもり? 罪滅ぼしのつもり? これまで散々傷付けといて?)

 手の動きが妙に優しいのが、しゃくに触った。

(やめて!)

 志田の手を払った。パシッと打つ音がクローゼット内に響いたが、向こうのお盛んな二人には耳に届いてないようだ。
 抑えきれない欲情と怒りをぶつけるように、こいつのたくましい肩にかぶりつく。

「––––っ!」

 柑橘系の香りに混ざる汗の匂いがした。志田は痛みで私を突き飛ばすどころか、ぎゅっと抱きしめてきた。
 感情の昂りが止まらない。私は声を押し殺しながら、嫌いなそいつの腕の中で泣いた。

辛い。悲しい。苦しい。悔しい。シたい。抱いて。愛して––––。

 全体重をかけていたせいで、ほんの少しよろけた志田がバランスを取るように、左脚を前に突き出した。その拍子で、こいつの太ももが私の股間にめり込む。
 バレーで鍛えられた太ももは固く、痛いほど勃起している肉芽を圧し潰した。
 怒りに勝る快感が、私を満たしていく。

 志田のボリュームが乏しい胸のせいで、こいつ心臓の鼓動を直に感じる。こいつも、また興奮しているのだろうか。胸の上下が早い。見上げて確認すると、脂汗を滲ませていた。どこか苦しそうだ。

 やりたい盛りの平手と、野生的なねる。理佐と性生活を送っているらしい志田と、嫉妬に狂っている飢えた私。
 一人なのは私だけだ。嫌な焦燥感が私を襲う。

(ああなんで。私は、こいつなの。プロ意識が無くてムカつくこいつなの––––)

「く……! イくっ!」

 平手の果てた声がした。
 合図に、私たちはどちらからともなく離れた。気まずい空気が漂う。

「やっべ、ご飯の時間だ!」

「待って、シャワー浴びたい。秒で終わるから」

「うん、早くして」

 私たちは興奮を鎮めるように息を整えながら、ばたばたと慌ただしく動き回る足音を、ただじっと聞く。
 ぱたん、とドアが閉まる音を最後に、部屋はしんと静まり返った。何分、何時間経ったか、わからないほど長く苦痛な浮気劇場は幕を閉じた––––。

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