のぞき!ふぉ。

 平手がねるのほうへ向き直り様に、双方の顔が重なった。平手は躊躇ためらいを見せつつも、ねるのキスを拒む様子はない。
 私は目を疑った。

(なに、して––––)

 梨加とのキスは以前、最悪にも目撃したことがあった。恋人以外の人とのキスも目撃する羽目になるなんて。呼吸を忘れるほどの衝撃を受けた。心臓が痛い。

 人の気も知らないで、ニヤニヤと隙間を覗いているこいつに、本当に、本気で、怒りを覚えた。奥歯が砕けるほどに噛み締めながら堪える。
 非難するような視線を向けられていることに気付いた志田は悪びれた様子もなく、クローゼットの向こうの方を顎でしゃくってみせた。
 得意げな微笑なのが、急に不安になった。怖い。とても怖い。目眩を起こしそうなくらい、心臓がうるさくふるええだす。

 恐る恐る隙間から、向こうを覗く。
 想像以上だった。
 平手の方から腕を回して、積極的に求めていた。お互い顔を交互に傾けあいながら、本能に任すがままのキスを交わしている。日本のドラマでもあまり見ないような、激しいキスだった。
 淫猥な唾液の交換音が聴こえてくるのは、気のせいだろうか。

(どういう、こと––––?)

 にわかには信じられない光景に、頭が理解できない。私は、かなり動転していた。
 なにかが喉につかえてるのを感じたのは、嘔吐をもよおしたのか、悲鳴をあげたいのか。自分でもわからなくなっていた。頭が、真っ白になっていく。
 恐怖光景に冷えるどころか、熱い鳥肌を立てていく。

 二人とも、蛇が交尾するみたいに淫靡いんびに絡み合って、ベッドに転がった。私が平手を想ってダイブしたベッドに。
 駄目。苦しい。息ができない。窒息する前に、目を逸らした。
 扉の向こうで起きている“オカルト現象”を、私なりに解釈してみる。
 ああそうか。これは夢なんだ。
 もしかして。ねるがなにか媚薬でも盛ったのかな。
 いやあれだ。志田が仕組んだ悪趣味なドッキリじゃなかろうか。
 いくつか精神衛生的に良い理由を思い浮かべたが、どれも現実的ではなかった。

「はあぁぁぁ……」

 生々しい吐息が聴こえた。
 未だに梨加とのキスシーンが脳裏に焼き付いているというのに。それが更新されるシーンがきっと行われている。
 私の心をえぐるに違いないのに、隙間に目を近づけていた。どうしてかはわからない。往生際の悪い脳みそが足掻あがいているのか、それとも、狂ってバグを起こしたのか。
 頭では理解できても、心が理解するのを拒む。

「はぁっ……はっ……」

「てち……んっ」

 覆いかぶさっている平手が、我慢出来ないとでもいわんばかりの性急さで、荒っぽくねるの口を犯す。
 ねるはやんちゃな舌に応えるよう、舌で優しく受け止める。下から、大胆に平手の股間をぜ回している。見ていて腹立つほど、手馴れた手つきだった。

 ねるの手が、平手のズボンの中に突っ込んだ。そして。なにかを引きずり出した。一瞬なんなのかわからなかった。
 いきり立つそれは、下から上に向かって、肌色から薄紅色のグラデーションで彩られている若き竿だということが、ようやく理解できた。幹の部分に、静脈だか動脈だかが浮き出ている。

(これが、てっこのおちんちん––––)

 私は、フタナリという性別を実感すると共に、平手のおちんちんをはじめて見た。他の女に翻弄される形で。

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