Life is a series of choices.
-by William Shakespeare
「人生は選択の連続である」
––––ウィリアム・シェイクスピア
私は、暗闇にいた。
あたりは真っ暗。深い闇。命あるものは私一人だけだと悟るほどの寂寞さに、まるで世界の終わりに迷い込んだような恐怖を覚える。
それも束の間。遠くのほうでぽつり、と微かな優しい明かりが灯っていた。暖かさを感じさせる明かりに向かって、体が勝手に動く。
明かりの正体が判ると、無性に懐かしくなった。そこには、青春時代のさまざまな情景を再現したジオラマが広がっていた。
学校の玄関にて。箸が転んでもおかしい年頃の女の子と混じって、大口を開けて笑っている私。
廊下にて。怖い先輩に目をつけられないよう、神経質になって通り過ぎる私。
教室にて。退屈な授業の暇つぶしに、ノートの端にパラパラ漫画を描いている私。
体育館にて。運動系の部活で身体中にへばりついているスポーツウェアにスポーツドリンクをがぶ飲みしている、びしょ濡れの私。
夢と希望に満ち溢れて、無敵になった気でいた青い私。眩しい記憶の連続。まさしく青春であった。
連なるジオラマを辿っていくと、最後の方にライトが照らされた。終着点だ。
教室にて。クラスメイトに囲まれて、向かい合っている二人の女の子。その一人が向かい合っている子に向かって手を差し出している。差し出されて驚いているのは、私だ。
今でも思い出すと胸がじんわりと甘くなる。卒業前日のことだった。
「私と付き合ってください」
私は目を潤ませながら、ためらいなく。
「はいっ!」
クラスでダントツに可愛い子からの大胆告白を断るはずもなく、私は二文字で返事した。
歓声がこだまする教室。騒ぐクラスメイトの後ろで、ぽつんと立っている地味な女の子。その子は複雑そうに微笑んで私たちを祝福している。ふと思う。
もしも、その子と付き合う選択をしたら––––。
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