のぞき!ふぉ。

 欅坂がデビューしてから5ヶ月。私は焦っていた。なぜなら、ねるの存在があったからだ。

 発足当初は二番手だった私の位置に、いつの間にか、ねるが立っている。
 五島出身の自然児に加えてインテリキャラ。途中から加入したサクセスストーリー。愛嬌のあるたぬき顔……。
 平手とねるとのセット売りキャンペーンがはじまり、二人のツーショットの表紙やインタビュー特集が組まれた雑誌が本屋に並ぶようになった。

 平手の中でもねるの存在が大きくなっていくのは、当然ながら感じ取っていた。平手のことが好きだから。
 欅での二番手が、ねる。平手の二番手も、ねる。こんなはずじゃなかった。私の思うように物語が進まない。

 衣摺きぬずれのような音がした。もう一度、隙間を覗いてみると、ねるの一糸まとわぬ裸体が飛び込んだ。

(なっ、は、裸……!?)

 いているわけでも、そねんでいるわけでもない。率直な感想として、決してスタイルがよいとは言えないからだだった。しかし、素人っぽさがかえって男を駆り立てるのはなんとなくわかる。男が好きそうな躰だった。

「はぅンッ! そ、そこぉ……」

 ねるの髪の毛がざわり、と揺れた。仰け反りかえって大きく息を吐いている。
 平手が恋人との通話を続けながら、指がねるの中へ挿し入れしているのが丸見えだ。おびただしい量の愛液が、突くたびに溢れ出している。

「んぐぅ……て、てちぃ、あン! 意外と、激しッ……は、ん」

 私の手足が震えだした。涙が、汗が、止まらない。心臓がけるように痛い。それでも、目を逸らせない。
 ねるは、せがむように腰を卑猥に揺り動かしている。あだっぽくくねくねと踊らせ、快感に素直に翻弄されているのを恥ずかしげもなく晒けだしている。
 男でもフタナリでもない女性の私から見ても、欲情してしまいそうなほどエロティックだった。平手の牡に火が点くのはごく自然なことだろう。それでも、どこか腑に落ちない。落ちたくない––––。
 いくら粗探しをしようとしたところで、感度が最高で、床上手で、奉仕的で。男にとって理想の女性にしか映えない。
 悔しい。女としてのプライドが許せなかった。

 ねるの顔が、肉食の雌そのものになっていた。
 私はそろそろ、と危惧していた。その不安は的中する。ねるは平手の上に跨った。

やだ。
挿入っちゃう–––––。

 私は唇を噛んだ。鉄の味がしてしまいそうなほどに。心臓が、胃が、痛い。

 ねるは何人かの男を牡にさせてきたであろう。平手も、ねるで牡になろうとしているのだ。
 その瞬間を、出歯亀でばかめみたいな形で見守るしかできないなんて。なんたる苦痛。なんたる屈辱。

 ねるは扉の向こうから憎悪の眼差しを向けられているとも知らずに、平手の若竿に花芯を擦り付ける。平手の若竿は喜びで振らす犬の尻尾のように、ピクピクッと反応した。

「ウッ!」

 平手は嬌声らしき声を、クローゼット内にも伝わる声量で、漏らしてしまった。そこから、平手は目を醒ましたように、ねるを拒絶する。
 梨加へ必死に弁明する姿が不憫ふびんに思えるが、平手が最後の一線は超えないかもしれない一縷いちるの望みにすがり付く。しかし、それは儚く消えてしまった。
 ねるの方が一枚上手だった。聞き分けの良い子供のように、すんなりと下着を履きはじめた彼女を、平手は引き止めてしまった––––。
 私はこの先の展開が見えてしまった。

 目を閉じればよかったのに。耳を塞げばよかったのに。
 平手の貞操が、完全に呑み込まれるのを確認してしまった。言うまでもなく、トラウマは強烈な映像として更新された。

ニュルニュル……

 挿入る瞬間。爆ぜるような嫉妬、衝撃、屈辱がぐらりと世界を揺らした。
 ねるは平手をおもねるように純情ぶって。

「きつぅ……」

 なんて言った割には、腰を上下に打ち振りはじめる。平手の若竿がもぎ取られそうなほどに激しく。

 平手は、恋人に「好きだよ」と告げて通話を終えるとスマホを放り投げて、ねるを押し倒して思い切り腰を振り始めた。その豹変ぶりは、センターとして舞台に立った瞬間にスイッチが入る彼女そのものだった。

「あっあぁん! あん!」

 ねるは大きな喘ぎ声を上げながら、なまめかしい表情をして平手の情欲を煽る。わざとらしいのがまた耳障りだった。平手は復讐するがの如く、猛攻撃を始める。

「ああ、ねるの膣内、すごく気持ちいいよ」

 貪欲に快感を求める平手の姿は私にとってはかなり衝撃的だった。綺麗な彼女がいながら、他の女と性行為に及んでいる平手の節操なさに腹立てながらも、荒々しく抱かれるねるには羨ましさを覚えた。
 私はセックスで、あそこまで乱れたことはなかった。

ズキン––––

 胸が、股間が、甘く疼いた。
 ちょうど、こちらでも“オカルト現象”が起きた。私の手が股間へと無意識に動いていたのだ。恥骨あたりをさすっていたところでハッと我に返る。

 自慰の経験はなかった。しようとも思わなかった。セックスの良さがわからない私に、性欲というものは存在しないと思っていた。どういうわけか、ムラムラしていた。
 今、アソコを掻き回したいくらい、発情しているなんて––––。

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