野宮神社を後にして竹林の小径を抜けると、いかにも古都という風情のある通りに出た。どこまでも石畳の道が続いており、人と人力車が行き交っている。まるで昔へタイムスリップしたかのようだ。
両側に並ぶ老舗の商店街に、茜は無邪気にはしゃいでいる。奥歯まで見えそうなほどに口を大きく広げた屈託のない笑顔につられて、私は切なく笑った。
「あれ見て! ローソンがなんかカッコよくない?」
「ほんとだ、和風仕様になってるね」
茜が指差した先には、商店街につつましく構えている、京都仕様の“黒いローソン”があった。白と黒を基調とした、古民家のような落ち着いた外観が、自然と古都に溶け込んでいる。流石、古い伝統を大切にする京都ならではの施策といったところか。
また少し歩くと、事前に調べた時に出てきた店が目についた。
「あっ。そこの土産屋、有名みたい」
「買おうよ! 買お!」
店に入るないや、茜の目が鋭く光った。そして、彼女は導かれるようにして、その場から歩き出す。彼女の行く先がすぐ分かった私は、思わず吹き出しそうになった。
彼女を引き寄せている犯人は「嵐山桃肌こすめ」とかいう、嵐山限定の美容商品だった。私の推測通り、彼女はその商品を手に取ると、ひとつひとつ丁寧に吟味しはじめた。
そんな愛おしい彼女を横目で見ながら、布小物や陶器に和アクセなど、はんなりとした京土産が並ぶ商品を物色していると。
「ね、見て! お揃い~!」
テンションの高い声に振り返ってみたら、茜がにこやかに箸を持ち上げていた。思わず目を凝らして見る。美容商品かと思ったら箸とは。しかも、夫婦箸とは。
「名前、掘れるんだって!」
嬉々として夫婦箸を見せているところに、内なる自分が「もしかして……同棲?」と推理している。
思った以上の進展、そして残酷な現実との対面に、恋するハートがミシミシと音を立てて、ひびが走っていく。
茜が持ち上げている夫婦箸は、煌びやかでラメが入っている派手なデザインだった。男性が持つには、やや幼稚っぽく感じられる。
「もっとシックで落ち着いた方がいいんじゃないかな~」
人前で不機嫌を見せてはならない、というのが親の教えだった。これ以上は、私の“お嬢様”のイメージを崩す、醜い私を制御できない気がした。
心が乱される前に、逃げるように店を後にした。
「え? あ、待って、友香……」
素直に祝福できない自分が惨めでならない。
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インターチェンジ面白すぎて一気に見ました!
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