初デートの巻

 幾万本の竹が生い茂る清涼感たっぷりの竹のトンネル「竹林ちくりん小径こみち」を歩くと聴こえてくる、そよそよ吹く爽やかな風に揺れる笹鳴りの心地よい演奏が、都会の喧騒けんそうを忘れさせてくれる。

 穏やかな木洩こもの中、茜は私に笑顔を向けたまま、後ろ歩きをしながら手を引いていく。私たちは、公園の池でボートに揺れるカップルのように、向かい合いながら移動していた。

 最高に可愛い姿を写真に収めたくてスマホを掲げると、彼女は嫌がるどころか自信満々にピースする。そんなところもすごく、すごく、可愛い。
 私の指は止まらず、ひたすらシャッターボタンを押す。スマホ画面に映る好きな人は「撮りすぎ」と白い歯を見せて笑った。その瞬間も撮る。
 こんな幸せすぎる時間を茜は好きな人とも過ごすのだろうか、と思うと妬けてまたシャッターボタンを押す。

 

 道に沿ってのんびり歩いていくと、終端にたたずむ目的の神社が見えた。

「さすが縁結び神社ね……」

 野宮神社を目の前にした茜の第一声が低く唸るくらいには、多くの参拝者で賑わっており、多くはご縁のご利益に授かりたい女性客で占めていた。
 一〇代の学生のような若い子から五〇代の方まで、幅広い層から支持されているのを見るあたり、良縁をもたらしてくれる期待が寄せられていることが伺い知れる。

 並び待ち時間の間、茜を退屈させたくなかった私は、事前に勉強したことを話題に持ち出すことにした。ひとつ深呼吸をして「よし」と、意気込んだ私はとびっきりの笑顔を向けながら話しかけた。

「あのね! この神社ってね、平安時代にできたみたいで。源氏物語とかでもモデルになったって有名らしくって。すごいよね。あ、この黒木鳥居とかは……」

「そこまで調べてきたの? ほんと真面目だよね、友香って」

 茜はぽかんと、して私の顔を見ている。張り切りすぎて空回りしちゃう、この既視感に「ああまたやってしまった」と額に手を当てて思った。
 私はどうやら固すぎるらしい。世間離れしているところがあるのだろうか、メンバーの皆さんを白けさせてしまうこともしばしばあった。

「お恥ずかしい……」

「ううん。友香のそういうとこ、好き」

 はっとして顔を上げると、茜は黒木鳥居を見上げていた。いつもの気が強そうな顔が穏やかなものになっていたのに、ドキッとする。
 茜の横顔は、日本人ではあまり見ない綺麗なエステティックラインの輪郭をなぞるように、逆光を浴びて輝いていた。彼女の綺麗な横顔に、しばらく目が離せない。
 横顔も、肌の色も、コンプレックスだった自分の外見が、彼女と並ぶと不釣り合いに思えて、申し訳なさそうに身を縮める。

(綺麗だなあ、ほんと……)

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