石森虹花は舞台を頑張っているらしい。本人は「そんなんじゃないって~」と、はぐらかしていたが、舞台の俳優と出来ているという噂もある。
今泉佑唯は念願の歌手になり、テレビでも引っ張りだこだ。今日は忙しい中来てくれた(最近、フライデーで社長の愛人疑惑という記事で彼女が載ったらしくて、妙に気まずかったが)。
上村莉奈は地元のJリーガーに所属しているサッカー選手と付き合ってるらしい。しかし、今日は愚痴ばかりこぼしていた。それも一種の惚気なのだろう。
尾関梨香も初めての彼氏ができて以来、今も続いてる。今日は惚気話ばかりで少々ウザったかった。
織田奈那はクラスで一番先に結婚した。今や2児の子供に恵まれて、さらに、素敵な旦那までゲットしている。理想の家族像だと周りから羨ましがられている。
小池美波はおっとりとした見た目に似合わず、合コンでは常に勝ち組で、男が切れた事がない印象だ。本人の「モテたことないからわかんないですぅ~」としらじらしい口癖は相変わらず健在だった。
小林結衣は学生の頃から大人しく口癖が少ない割には、何故かクラスで一番モテた。あまり語らない彼女だが、特に男には困らない生活を送っているらしかった。
佐藤詩織は彼氏が浮気してるかもしれない、と泣きながら相談してきた。彼女は何故か浮気されることが多い。それでも、すぐに新しい男が出来たりするもんだから、皆もあまり真剣に捉えていないようだ。
斉藤冬優華はかかあ天下で、今、同棲中の彼氏を尻に敷いているらしい。次に結婚するのは彼女の可能性が高い。
羽生瑞穂はモデルを頑張っていて、同業者の彼氏がいる。モデルカップルと、美男美女カップルで皆から憧れの的だ。
原田葵はかなり年上の彼氏がいて、皆からはその彼氏はロリコンだと揶揄しているものの、本人は膨れながら否定している。
米谷奈々美は初めての彼氏ができ、お互い初めて同士ということもあり、純愛を貫いてる模様だった。
渡邊理佐は付き合うと長い印象だが、最近別れたらしい。フリーの時間を楽しんでいると言っていた。
長濱ねるは今はフランスに暮らしており、SNSから外人たちと奔放な恋愛を楽しんでいるのが見て取れる。
敗北だ。がっくりと肩を落とす。自己嫌悪で目の奥が熱くなってくる。
「なんなの……皆エキサイトしてるじゃん」
「最後は茜、お前だぞ~とっとと卒業しろ」
(卒業できるもんならしてるんだけど……)
「とりあえずさ、経験してみたら?」
鈴本はようやく酒が回ってきたのか、親指と人差し指で輪っかを作り、もう片方の手の人差し指を輪っかに入れるポーズを見せつけている。鈴本ってこんなおおっぴらな性格してたっけ、と反応に困っていると、志田が親指を立てて後ろに向けた。
「さっきのウエイターとか頼んでやればいいじゃん」
そこから志田お得意のイジリが始まる。彼女のいじりは他所から見たら楽しいが、当事者にとっては地獄なのだ。
「おーい、ウエイターさー……」
「やめてってば!」
志田が個室の襖から顔を出して、ウェイターを呼び止めようとしたところを必死に止める。
私の秘密を知っているのは志田と鈴本と渡辺の3人のみだった。彼女たちとはいつもこんな調子で過ごすが、口は堅いし信頼できる存在でもあった。
「そーいえば、ゆっかー来てなかったよね?」
不意に友香の名前が出てきて、ピクリとジョッキを口に運ぶ手が止まる。
「聞いた? ゆっかー結婚するって」
「へー、あのボロがかぁ」
“結婚する”
とうの昔に置いてきたはずの、モヤモヤやドロドロとした複雑な思いが、心の中で渦巻いちゃったのである。湧き上がる鬱陶しい感情をかき消すように、残りのビールを一気に空ける。
(今のなに? もう終わったことなんだから……)
「はぁ~……」
ほろ酔いのままの帰り道、もうすぐ6月だというのに夜は冷えた気がした。
すごく、寂しい––––。
家に着くと、隣の家のドア前で激しいキスをしている女性2人の姿が見えた。家のドア前とはいえ公の場なのに、深いキスを交わしながら乳房を弄ったりしていた。“受け”の女性は息を弾ませながら目を潤ませている、その様は完全に発情しきっている雌の顔だった。
“攻め”の女性は……隣の家の娘、平手だ。彼女は女癖が悪く、色んな女をとっかえひっかえしていた。
(だらしがないやつ!)
場所を考えずに盛る二人に対して「まるで猿ね」と吐き捨てるように言い、自分の家に戻った。