エピローグ

人間は、恐れている人より、愛情をかけてくれる人を、容赦なく傷付けるものである。––––マキャベリ

 

平手は性の悦びを初めて知って以来、毎晩、一心不乱に渡辺を抱いている。

今泉は人生で初めて経験する失恋の苦しみに、枕で声を殺しながら泣いている。

渡邊は泣きじゃくる葵を撫でながら、愛でるように耳たぶを噛んでいる。

菅井は同性への恋慕に戸惑いつつ、悶々と眠れない夜を過ごしている。

 

それぞれの思惑が交錯し、互いのストーリーは迷宮入りを果たした。
21本の道が十人十色の動きを見せている。
交わる道、道を追いかける道、互いに跳ね返る道。
そして、交わる道を、遮る道。
欅坂46の少女たちの道は絡まった糸のように、複雑な塊となった。
もう解けないほどに––––。

 

「お疲れ様でしたー!」

 仕事から終え、帰る平手の背中に語りかけるように本読んでいる少女は言った。

「人間は、恐れている人より、愛情をかけてくれる人を、容赦なく傷付けるものである––––かぁ」

 本から垂れ目が覗かせている。おっとりした印象を与える垂れ目は愛らしいというより、色情的という言葉がふさわしかった。

 少女たちの夏が始まる。

––––––––––To be continued.

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