大学になって、友香と久し振りの再会を果たした。友香の方から連絡をくれたのだ。あの日から今日までずっと気がかりだったけど、折れたくなかった私は頑なに連絡を出さずにいた。結局、友香の方から折れて連絡をくれたんだろうと思うと、私はすっかりいつもの自信を取り戻していた。
久しぶりに会った友香はお洒落に目覚めたのか、すっかり可愛くなっていて思わず見惚れてしまった。寮生活から一人暮らしにシフトした私は、友香を家に泊まらせる。
一緒に話題のラブドラマを観ていた。濡れ場のシーンが流れ、気まずくなってどきまぎしている私に友香が「そうだ!」と、手を叩いて言った。
「そうそう。聞いて欲しい事があったんだ」
いつになく頰を赤く染めて、乙女らしい反応を見せている。私の胸は祭り状態で、跳ねまくった。
(き、キター! これは、もしや……リベンジ告白!?)
あの日のことを後悔していた私は今度こそ「喜んで」と、答えようと構えた。
「えっ、なになに?」
「私ね……こないだ、ついにしちゃった!」
私の胸の中の祭りが途中で事故を起こしたように、騒々しくなる。
「えっ……」
「痛かったけど、彼氏が優しかったから……」
(待って、しちゃったってなに? というか、彼氏いたの?)
「ああー……そう、なんだ……」
中学と高校の時に感じた胸の苦しみとはまた違った、苦しみが私を襲う。
「茜は、彼氏いるの?」
相槌すら危うくなるほどショックを受けていた私は、しばらく返事できないでいた。友香が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「……特定はいないよ。面倒臭いし」
絞り出すように出た言葉がそれだった。私の精一杯の強がり。そこから「恋愛経験豊富」の自分を演じる生活が始まった。
「えー! さすが茜!」
友香の携帯電話が震えた。友香はウキウキとした様子で携帯電話を開いて通話に出る。相手は友香の初めてを奪った彼、だった。友香がリビングで彼氏と連絡を取っている間、私はキッチンに「片付けをする」という名目で逃げてきた。
友香が、誰か知らない男性に抱かれた。悔しくて、切なくて、苦しくて。私の友香に対する純粋な“好き”という感情に、ドロドロとしたものが渦巻き始める。
将来……一緒にこれを飲みながら暮らそうね!––––
(友香あんた、そう言ってたじゃん! 嘘つき!)
感情が行動に出てしまった私は、思いっきりマグカップを地面に叩きつけた。音に驚いた友香がリビングから私の元に駆けつけた。
「大丈夫!? 怪我はない?」
慌てながらマグカップの破片を集める友香。あの過ぎ去り日の言葉が蘇る。
私たち女同士じゃん––––
私はずっと彼女を突き放して来た。当然の結果だ。
夜、友香が眠りに落ちたのを確認すると、溢れてくる涙を堪えきれず、声を押し殺しながら泣いた。
これが私と友香の最後の思い出。