私の自慢の親友

 指原さんが私と村重を交互に見つつ、ニヤニヤしながら部屋割り発表した時点で、大体察しはついた。もしかしたら指原さんなら気遣って別々の部屋にしてくれるかもしれないという期待を抱いたが、それはあっけなく裏切られた。
 指原さんは間違いなくサドに違いない。

 村重がさっきからチラチラと、こちらに視線を送ってる気配がしたので見やると、目が合った。
 さっきの仕返しと言わんばかりに、村重以上に大袈裟にそっぽ向いた。その勢いで首ひねってしまい、痛がってるところはどうやら村重に気付かれてないようで安心した。
 私ってつぐつぐダサいなあと思った。

 メンバー達は気まずい空気を放つ場所から一刻でも早く離れたかったのか、ぞろぞろとそれぞれの部屋に向かっていった。
 取り残された私達二人だが、どちらが先に動くか牽制けんせい状態になっていた。実におかしい光景だった。
 私が先に動くと、村重が「あ、あ……」とどもりながら慌てて荷物を抱えて、そそくさと歩き出した。不覚にも可愛いと思ったが、まだバトルは終えてないと自分に言い聞かせた。
 部屋に向かう道中で、村重が私を気にかけているのがモロバレで、思わず許しそうになったけど負けず嫌いの私は、入室してすぐ化粧品や寝着などをまとめて村重を突き放した。
 ほんと、私って可愛くないなぁ。

 

 

 指原さんの部屋をノックして「どうぞどうぞー」と、返ってきてから入る。
 指原さんはなにやらtwitterの更新に勤しんでるようだった。待っていると、更新が終わったのか指原さんが「ごめんごめん、で何?」と向き合ってくれた。
 ここで、いつもならサシハラスメントが来て私がキャー、と乙女な反応するまでがお決まりの流れだったのだが、指原さんにアクションを起こす気配は無かった。

「あの……今日は、その、セクハラとかしないんですか?」

「え、なに? 誘ってんの?」

「ち、違います!」

「エロいね、さくらちゃん」

「そういう意味じゃなくて!」

 指原さんは本当に余裕があって羨ましい。こういう時、いつも早く大人になりたいと切に思う。

「今日はさくらちゃんにサシハラスメントは発動しないよ。だって他に発動したがってる人がいるからね」

 胸がどきんと動悸を打った。そして、先ほど突き放した時の村重の捨てられた子犬のような寂しそうな顔が思い浮かんだ。その顔が私の胸を締め付けてやまなかった。

「その相手は誰か教えなくても、賢い咲良ちゃんなら分かってるよね?」

 こくりと首を縦に振った。

「村重さ、咲良ちゃんがこっちにいない間、ずっと咲良ちゃんのことを言ってたよ」

 そんな事は予想通りだ、というのは傲慢ごうまんだろうか。それでも嬉しくて、愛おしくて、胸が高鳴った。
 ポケットに突っ込んであったスマートフォンが続けて震える。慌てて確認すると、村重からのLINE通知が何通か来ていた。結局、通知は外さなかった。

「そんなに他の部屋にいくぐらい私のことが嫌いですか!」

「そーですか!」

「なんだよ!」

「せっかく会えたのに」

「ばか」

「ばーか」

「ばーき」

 最後の文字は勢い余ってフリックミスしたんだろう。余計愛おしくなったから困った。

「村重ちゃん、グイグイ行けるけどガラスのハートの持ち主だから。これ以上いじめちゃうと村重ちゃんが可哀想でしょ」

どうやら私がいるべき場所はここじゃないみたい。
私も素直に自分の気持ちに従わなきゃね。

 おじゃましました、と一礼したのち、自分の部屋に戻る。胸を締め付けてやまない犯人に会いに。

 部屋に戻ると、ベッドが丘の形を作っていた。その丘から鼻をすする音が微かに聞こえる。床には涙を拭き取ったであろう丸まったティッシュが結構な数で転がっていた。こちらもなんだか泣けてきて、涙ぐむような愛おしさが込み上げてくる。
 布団に潜り込むと、村重の丸まってる背中が見えたので、無言で後ろから抱きしめた。

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