私の自慢の親友

 私は宮脇咲良。AKB48のセンターをやらせて頂いて、きっとHKT48のみならずAKB48でも欠かせない存在になっている、はず。それでも、己の無力さを痛感することは多い。
 師匠でもありライバルでもある指原さんの背中を追いながら今日もセンターに立つ。

 AKB48の仕事が増えてきた反面、まだAKB48のメンバーと馴染めず、孤独な時間も増えた。HKT48の仲間たちが非常に恋しくなることも多々ある。特に、あの子が無性に恋しくなる。
 そんな私の僅かな楽しみは仕事終わりに必ず入ってる、あの子からのLINEを見ることだった。

「今日も素敵だったよ!」

 彼女は村重杏奈。私の親友。
 村重の声が恋しくなり、たまらず電話アイコンを押す。コール音が3回も鳴らないうちにすぐ出てきてくれた。

「さくらたん! お疲れ様! 電話くれるなんて嬉しげー」

 久しぶりに聴く愛おしい声に思わず頬が緩む。

「まあ暇だったから」

 顔とは正反対にクールを気取ってしまった。

「そうなの? でもスケジュールぎっしりじゃない?」

「ううん、平気。 指原さんに比べたらまだまだだし、HKT48の為なら全然頑張れる」

 今のは大方本音だけど、カッコつけちゃった。

「えー頼もしい! でも、無理しないでね。 倒れちゃったりしたら私泣くから」

 村重は本当に飾ることもなく、素のままで向き合ってくれる。だから好きになったんだけどね。

「今からね、前田さんと大島さんとご飯行くことになってるんだ」

 あながち嘘ではないが厳密には、指原さんのついでだった。
 私は彼女に対して少しでも自分を大きく見せたくなってしまう。

「凄いじゃん! あ、私も前に板野さんと食べたことあるけど、優しかったよー」

 彼女の何気ない言葉につい、妬いてしまう。

「あ、今日さ、共演者の男性から連絡先渡されたんだよね」

 これも嘘じゃない。厳密にはジャニーズや俳優などの類ではなく、自称AKB48ファンのお笑い芸人からだが。報告する必要性は感じなかったけど、少しでも村重を妬かせたくて試してみる。

「えー なにそれ! 凄いじゃん、流石さくらたんだね~。あ、でも、深夜デートには気をつけてね」

 嫉妬する素振りも見せない村重。それどころか、最後に自虐でオチをつけちゃう。そこが村重の愛されポイントだろう。だからこそ苛ついてしまう。
 その事は未だに自分でもショックというか整理出来てない部分なのに。我ながら面倒臭い性格してるんだろうなあと思う。

「まあ私は深夜デートとかそんなヘマなことしないけどね」

 ちょっと冷たく放ってしまった、と思ったけどそんな心配は杞憂だということが直ぐに聞こえた村重の笑い声で分かった。

「ひどーい! さくらたん冷たい~」

 全然1ミリたりともダメージ受けてないところも、なんだかむかついてきた。自己嫌悪のあまり、「はぁ~ぁ」と、深いため息をついてしまった。

「さくらたん……?  どうしたん?  疲れてる?」

 本当は心配させたいとかそんなんじゃないのに、口が勝手に冷たく突き放すようなことを話してしまう。

「まぁね、村重と違って暇じゃないし」

「ちょっと、暇なのは否定しないけど流石に傷つく。 最近、なんか当たり強くない?」

「……今から食事だから切るね! 明日からラインくれなくてもいいから」

「ちょっと待ってよ、落ち着……」

 村重の話が終わる前に電話を切った。ムッとした表情でスマートフォンを睨む村重の姿が安易に想像できる。
 最近の自分は彼女に対して強く当たってしまう。それはきっと寂しさと甘えたさからなんだろう……喧嘩の後、後悔の念に襲われた。
 そのお陰で指原さんからの呼ぶ声に最初気付かなくて、はっきりと強めの声で呼ばれた時にハッと我に返って慌てて指原さんの元へ向かった。

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