二人side
もう一人は男性器の飴を片手に、セーラー服(コスプレ用)を身に纏い。
もう一人は、暴れまくる極太バイブを片手に、女性器の形をした飴を片手に。
どこからどう見ても異質者である。
名残惜しいが、部活の集合時間が迫っており帰らなければならなかった。
「二人とも、ありがとう。また来てね」
笑顔で手を振る梨加。
「ばいばーい」
相変わらずのポーカーフェイスの愛佳。
朝とは違う運転手が迎えにきてくれた。有頂天になっている平手とは対照的に、渡邊は後ろ髪を引かれる思いでタクシーに乗り出した。
「えっと、行き先を……」
ブイイィィィイン……
「欅坂旅館までで!」
ブイイィィィイン……
「お願いします!」
ブイイィィィイン……
「はぁ……かしこまりました」
後ろの窓を見ると、二人ともタクシーの姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けていた。
「聞いて聞いて! り……ちん子ちゃんの電話番号ゲットしちゃった!」
平手は嬉しそうに渡邊に自慢していた。
「そっか、よかった」
よかった、と言ったあと、ため息を吐いた。
(あーあ、強がってないで連絡先聞けば良かったかな……)
渡邊は暴れまくる極太バイブを見つめていたが、やがて黒い何かが目についた。
「電源どこ……」
探り探りで見つけたスイッチを切ると、極太バイブはゆっくりと動きを止めた。そして、黒いなにかの正体が姿を現した。数字列……電話番号だった。胸の奥が熱くなるのを覚えながら、スマホに電話番号を打つ。
「もしもし。愛佳? 私だよ。今度さ、良かったら……」
珍宝館で、おかしな二人と出会い、少しおかしな恋が始まろうとしていた––––
0