記念すべき一日目の巻

 最初は、ドレスを着用しての撮影だった。私はパステルピンクのドレス、茜はパステルグリーンのドレスで、デザインは一緒であれど対照的なカラーとなっていた。
 ドレス。私の頭の中で、もわもわとあるワンシーンが浮かぶ。

 

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 優美で繊細なロココ調の装飾が施されている教会にて。讃美歌を受けながら向かい合うドレス姿の私と茜。
 席には私の家族、茜の家族。双方の家族が、我が娘の瞬間に涙ぐんでおり。そして、片方の席にはメンバーたちが騒いでいる。キスのジェスチャーをしたり指笛鳴らす子たちの隣で、欅のお母ちゃんである斎藤がピシャリと叩いて注意する。そんな仲間たちを他所に、熱っぽく見つめ合う私と茜。

「愛を誓いますか?」

 神父の問いに、私は勿論とばかりに答えるのだ。

「はい、誓います」

 ベールを上げると、あらあら、頬を茜色に染めてる茜の顔が。我が愛しの嫁に誓いのキスを––––。

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

(いやぁ、たまりませんな)

「菅井さん、あの……そろそろ準備をお願いします」

 顔を上げると、スタッフが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。振り返ると、茜とスタッフたちは既にスタンバイしている状態で、こちらの方を見ている。慌てて、ドレスの裾を上げて駆け足で向かう。

 紳士たるもの、恋人を褒めるのは嗜みだ。紳士でなくとも、茜はいくら褒めても褒めたりないくらい可愛いが。

「茜……ドレス、かなり似合ってるよ。うん、めちゃくちゃ可愛い!」

「ありがと」

 私の感じた違和感が確信となった。どこか、そっけない。

(私、なにかしたかな……)

 嵐山のデートの時もそうで、急に拗ねたりすることもあった。今は仕事の手前、あまり表に出さないだけで心の奥では私に対して何かしら不満を抱えているかもしれなかった。

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