5品目

「見て見て、私の犬の写真」

 犬のような眼に、チャームポイントの3点の泣きぼくろが印象的な子がスマホを周りに見せまくっている。石森家で飼っているレディちゃんというロングコートチワワの犬種を自慢しまくる親バカっぷりを発揮している。

 石森虹花。18歳。彼女曰く「特技は犬しかない」らしい(しかし、それも犬のクイズの3問目で間違えてしまうという有様)。
 アホの子と思いきや、ダンスのスキルはメンバーの中でも際立っており、なかなかのポテンシャルを持つ子だと思う。加入前は地下アイドルで活動していた時期があったらしく、それで培ったものだといえば合点がいく。

「アッハハハ!」

 大阪のおばちゃんのような笑い声が部屋に響く。地味な見た目ながら口を大きく開けて笑う、人の良さそうな笑いをする子だった。

 米谷奈々美。16歳。彼女の庶民的な雰囲気がかえって親近感を抱くのであった。笑顔を見てると、こちらまで幸せな気持ちになれる気がする。実際、現場ではスタッフたちに好かれていた。「女は愛嬌」という言葉があるが、米谷がまさにそれを体現しているのだと思う。

 打ち上げからずっと、黙々とご飯を口に運んでいる子がいた。不思議系の女の子で、正直未だに彼女のことはよくわかっていない。未知の存在であった。

 長沢菜々香。18歳。彼女はメンヘラというのだろうか、狂気に近いものを感じる。最初は少し怖い印象だったが、今となってはシュールなネタでその場の笑いを誘うところがあって、それがなかなか癖になる。suicaを自動改札に詰まらせたり、原宿に行くつもりが千葉に行ったりと、狂気じみた面白エピソードは尽きない。

 比較的実年齢より大人っぽい見た目の女の子が揃う中で、実年齢より幼く見える子が周囲に笑顔を振りまいていた。
 人形のようなぱちくりとした大きな瞳、黒子ひとつも見当たらない無垢で滑らかな白い肌。グループ一の小柄ながら色っぽく感じるのは、見た目にそぐわぬ豊乳の持ち主だからだろうか。既に、ザ・アイドルのオーラを放っていた。
 だがしかし。他愛ない会話に混ざってはいるものの、実際は無関心であることを私はなんとなく見抜いていた。馬鹿のふりして、実際はどこか周囲を見下しているのも。

 今泉佑唯。17歳。彼女は頭から足先まで徹底してアイドルな子だった。グループの中でも世慣れしている雰囲気があった。彼女の境遇は知らないが、おそらく苦労してきたに違いない。
 話しかければ特技といわんばかりに完璧な笑顔を向けてくれるが、それには体温を感じさせない営業スマイルめいたものがある。そして、周囲とは断絶があるようだ。少なくとも私にはそう感じられていた。
 そして彼女は偶然にも、私と同じ名前をしていた。

 2本目の追加のボトルは残りの6人分に注がれ、その人達に配られた。織田、尾関、菅井、平手、渡邊。そして、私のところに渡された。

 

「小林さん、どうぞ」

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