プロローグ

 年が明けて、年始の仕事が始まる前にメンバー全員が急ぎで集められていた。年末でのお祭り気分が嘘のように粛然としていた。
 深刻な顔で俯いているメンバー。状況が掴めずはてなマークを浮かべるメンバー。能天気に馬鹿面をしているメンバー。

「全員集まりましたね。ちょっと大事な話があるので聞いて下さい」

 沈黙を破るように女性スタッフが口を切った。
 “ちょっと大事な話”とは、年末、メンバーに配布されたお茶の中には本来混じってはならない怪しい飲料水が混じっていたとのことだった。
 この事実が告げられるとメンバーが騒然とした。深刻な顔をしたメンバーはまるで何かを知っているかのようにただ押し黙っていた。

 どうやら怪しい飲料水は都市伝説企画の番組のとあるコーナーで紹介された物らしい。しかもそれが欅坂46の忘年会に混入していたという。色はお茶に酷似しており、スタッフが知らず識らずに配布してしまったそうだ。メンバーの誰がその怪しい飲料水を口にしたのかわからなかった。スタッフの証言によると、コップに注いだのは6名分。つまり6名が口にしたということになる。

「怪しい飲料水のことについて、詳しくは言えないんですが、心当たりある6人は挙手をお願いします」

挙手したのは

平手友梨奈
渡邊理佐
尾関梨香
菅井友香
織田奈那

の5名のみだった。

「6名のはずですよ、あと1名足りません。正直に挙手してください」

 挙手を促すも、誰かが挙げる気配はなく、沈黙が流れるだけだった。一旦、スタッフ同士話し合うことに。

「すみません、もしかしたらスタッフの記憶違いだった可能性があります。もしかしたら他の出演者に渡してしまったかもしれません。挙手した5名は今後、スタッフとヘルス管理について厳重に行いますので報告はちゃんとして下さい」

「ヘルス管理?」

「どういうこと?」

 挙手してないメンバーは〝ヘルス管理を厳重に行う〟というワードを不審に思ったのか、怪訝な顔を浮かべながらコソコソ話を始めた。挙手したメンバーは口を割る様子もなく、合わせる顔がないと言わんばかりに俯いているしかなかった。
 欅坂46では、月経やホルモンバランスの崩れなど、女性ならではの悩みが仕事に影響しないよう、ヘルス管理が行われている。それが厳重に行うということは5名の体に何が起きているということを示していた。

「なに、重い病気にかかったとか?」

「まさか死……」

「ちょっとやめてよ」

 憶測で話を進めたせいで、大袈裟な方向に転じてしまった。

「なんかね~」

 ピリピリした雰囲気の中、オネエ調で口を開いたのは挙手したメンバーの一人、織田だった。しかし、次で衝撃の事実が織田の口から伝えられることになった。

「股間からちんちん生えちゃったの!」

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