プロローグ

「えっ……」

 鈴本が松本明子ばりのリアクションに続き、メンバー一同が目を大きく見開くなり、お互い目を合わせた後、年頃の女子ということもあって疑心を抱きつつも、きゃあきゃあと黄色い声で騒ぎ立てる始末。

「聞いた?」

「ちんち…って」

「どういうこと、メンバーが男になったってこと!?」

「静かに!静かに! 織田さん、勝手な発言は慎んでください!」

 スタッフはぁっと大きく溜息ついた後、なるべく冷静な口調で続けた。

「この事は欅坂46だけの話にして下さい。オフレコでお願いします。外部に漏らすなど言語道断。例え身内でもね」

 怪しい飲料水の正体は不明だが、どうやらそれを飲むと体の一部が男性化するということだった。つまりは半陰陽。俗に言うフタナリってやつだ。

 思春期真っ最中の欅坂46メンバー。
 青春を犠牲にアイドルになった彼女達は皮肉にも性春に溺れる未来が待っていた。
 この日により、メンバーの歩む道が一変し、それがだんだん複雑化していて、メンバーとメンバーとの線を繋いで行った。それは交差点のようになっていた。

 

半陰陽【はんいんよう】

性に関する奇形のうち,完全な雌雄(男女)の中間の特徴をもつもの。間性と同義であるが,ヒトをはじめ高等動物では半陰陽(俗称ふたなり)ということが多い。真性半陰陽は精巣と卵巣をともに有するもので,きわめてまれな奇形。

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