隠し事をさせてくださいの巻

 Mステ出演後、興奮が冷めやらずに帰宅すると、愛猫のトムが玄関で私を出迎えていた。丸みを帯びた身体を抱き上げると、折れ耳をぴくりと持ち上げて、ゴロゴロと喉を鳴らしている。 「おかえり、Mステ見たわよ。大変素晴らしかったわ…

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涙の意味。

「志田ちゃんと……エッチとかしたの?」 「は?」  トイレでたまたま葵と二人きりになって最初に聞いた言葉がこれである。あまりにも唐突すぎる質問に、口が開いた。いきなり何を聞き出すのかな、このオマセガキは。 「なんでそんな…

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ヴァージン

 Mステ以降、仕事が怒涛のように押し寄せてきた。悩む暇すら与えてくれないほど、めまぐるしい日々が続く。私は欅坂46の露出が増えていくほど、心の安定を欠いていくのを感じた––––。    休日の昼過ぎ。寮の皆は久…

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一歩前進の巻

 私たちがやすやすと出演していいでしょうか……?    デビューシングル「サイレントマジョリティー」がオリコン週間シングルチャートで初登場一位の記録を飾った。さらには、女性歴代アーティスト最高の記録を更新する快…

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笑ったほうが可愛い。

 初めてのMステは長いようで、あっという間だった。アイドルの最大の武器である笑顔もままならない状態で、ステージに上がりお辞儀する。緊張のせいか、タモリとのトークすら記憶になかった。幸い、自分のトークの出番はなく、ホッとし…

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平手と愉快な仲間たち!ふぉ。

 念願のMステの出演も決まり、アイドル活動は順風満帆だった。 (少しの油断が命取りになる。初心を忘れず、ちゃんと気を引き締めなきゃ––––)  精神を集中させる傍らで、ふあぁぁと思いっきり欠伸をして眼を滲ませている間抜け…

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コットン素材のピンクパンティ

 ミュージックステーションの出演も決まり、「サイレントマジョリティー」は事実上ヒット曲となった。欅坂46結成からデビューまで8ヶ月足らずでここまで、とんとん拍子で階段を駆け上るとは思わなかった。ありがたい事に仕事が増え、…

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警戒してほしいの巻

 急がなきゃ……!    アイドルと学業の両立を目指している私は、ダンスが他のメンバーに比べて、後れを取っていた。後れを取り戻すべく、早朝に向かうと、ダンスのレッスンに励んでいる茜の姿があった。 「おはよう~早…

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空白の17番の子。

「理佐さんって。私のこと、嫌いですよね」  目の前の子は笑顔を浮かべて言った。どこか寂しそうな瞳で私を見つめて。  彼女は長濱ねる。けやき坂のメンバーの一人だ。彼女との出会いは4ヶ月前に遡る。  欅坂46が活動開始してか…

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恋バナ!ふぉ。

 楽屋にて、メンバーたちはガールズトークに花を咲かせている。例の5人はいなかった。そして志田もいなかった。どうやら志田はスタッフからお灸を据えられてるらしい。  トークのテーマは言わずもがな、恋愛だった。一応アイドルグル…

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