楽屋にて、メンバーたちはガールズトークに花を咲かせている。例の5人はいなかった。そして志田もいなかった。どうやら志田はスタッフからお灸を据えられてるらしい。
トークのテーマは言わずもがな、恋愛だった。一応アイドルグループということもあり、妄想話で盛り上がる。次の仕事モードに入りつつあった私は、一人で番組の台本を読む。
目の前には私と同じく、台本を読んでいる小林結衣がいた。
私と同じ「ゆい」の人で、ゆいちゃんずというコンビを組んで「渋谷川」というユニット曲も出している。
小林は見た目はいかにも今の子風のコギャルっぽいルックスをしている割には、意外とメンバーに溶け込めてないところもあった。あまり群れない性質なのかもしれない。少し距離を置いたところから全体を俯瞰するタイプに、どこか親近感を覚えた。
「もしも、あの5人の中で付き合うとしたら、皆誰を選ぶ?」
〝あの5人〟というワードに聞き耳を立てる。小林もチラチラと気になっているようだった。デリケートな話題ではあったけど、5人とも居ないからか、それとも以前から気になっていたのか皆して盛り上がっている。
「やっぱり、理佐じゃない?」
「わかる。なんかイケメンだよね」
「菅井様も結構よくない? なんか紳士そう」
「私は織田がいいかも」
「あー優しいし面白いもんね! 少しうるさいけど」
「平手はちょっと年下すぎるよねー、手出したら犯罪って感じ」
(もし付き合うなら平手、と思っている私は犯罪者か……)
とりあえず、平手を候補に出す人はいないようで安心した。すると、ねるが信じられないような言葉を発する。
「志田が例の5人の中に入ってたら、よかったと思わないですか?」
「はっ?」と心の中で突っ込んだ。
(あいつが? ないない……)
「愛佳結構よくない?」
「私も思ってた!」
「顔がタイプ!」
「顔はいいよね」
「顔はね」
「ちょっと!」と、冬優香が笑いながら突っ込む。
「それじゃ、なんか性格悪いみたいじゃん!」
「違う、違うんだよー」
「性格ちょっと謎だよね」
「そうそう。掴めないというか、少し気難しい感じはするよね」
志田が案外人気だという事実に頭を傾げた。
(うっそでしょ。あんなのどこがいいんだか……)
さっきから黙り込んでいる梨加を、隣にいた茜が肘でつついた。
「ぺーちゃんも、愛佳がよかったと思わない?」
「えっ……」
「二人とも仲良いし」
「ん?」
梨加は、とぼけた表情で答えた。
「あーでも。愛佳には渡したくなーい! 私が男になってぺーちゃんを独り占めするんだからぁあー」
茜に抱きつかれてる梨加は、唇を噛みながら視線を泳がせている。何か隠している様子だったが、梨加ちゃんに関心がなかった私は気に留めなかった。