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 家のドアを開けた。私はこの日に、一生忘れることのない体験を二度、味わうことになる。私の誕生日のサプライズはまだ終わっていなかった。なぜなら、指輪を差し出されたからである。

「もー本当は、0時同時に渡したかってんけど、仕方なか」

 テーブルの上には誕生ケーキがある。

「私ね、この日のために一生懸命ダイエットしたと」

 どや顔を浮かべてポーシングをとっている。ウィンクまでした。あざと可愛い。

「本当にトレーニングしてたの!?」

 オーバーリアクション気味に驚いた。私を不安にさせた仕返しに、ちょっと意地悪な反応をしてみたのだ。

「……痩せにくい体質で悪かったね」

 ねるはジッと私を軽く睨んだ。

「一緒にウェディングドレス着ようねって約束したじゃん? だけん、少しでも理佐とお似合いになるよう少しでも痩せなきゃって思って。理佐スタイルいいしさー」

 ねるは言った。「私、ドラえもんみたいだしさ」

 ぷっ、と吹き出すとねるからのパンチが飛んできた。流石、五島育ちの野生児。少し痛い。

「ほんと、何が起こるかわからないよね」

 私はねるの手を両手で包んだ。ねるはどうしちゃったの、といった様子で垂れ目をぱちくりとさせた。さっきまで道路のど真ん中で寝ゲロしてた酒臭恋人が唐突にポエマーと化すから無理もない。

「指輪貰っといて、こう言うのも変だけど……本当に言わせて!」

 高校卒業以来、やや大人びた表情になったけど垂れ目に残る真っ直ぐな眼差しは変わらない。

「どんなことが起きても、私は決してねるの傍を離れない。だから、これからも一緒に居てくれますか?」

 大きな瞳に映る私の姿が揺れた。ねるはじんわりと涙を浮かべた。

「もー私がかっこつけようとしたのに、取らんでくれる? ていうか、どがんしたと? 今日ん理佐、なんか別人みたい。なんか誰かと入れ替わったような……」

「ふふっ、生まれ変わっただけ」

 人生は木に生える枝のように、分岐はたくさんある。選択の連続だ。私はこの枝でいい。

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2件のコメント

  1. なかなかの奇抜な設定のお話で楽しく、そして最後は前向きな話して面白かったです。
    さくらん坊さんのお話は、実は思い出しては読み返しています。
    既に恋人同士なんだけど、片方の勝手?な気になりごとからお話し、最高です。
    また期待しちゃいますが、こっそりと応援しています。

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    1. >ひぃ さま
      ありがとうございます。
      実は当初の構成としてはバッドエンドだったんですよね。
      尾関理佐になって「こんなはずじゃなかった!」的な・・・
      でも前向きに終わりたいのでこのような終わりに締めさせていただきました。

      リピートしてくださってるということかな?お恥ずかしいですが、嬉しいです照
      期待に応えられるよう、頑張りますね!

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