8月5日から7日にかけての3日間、お台場にてTIF2016が開催された。
Tokyo Idol Festival(東京アイドルフェスティバル)––––
2010年より開催されている日本最大規模のアイドルイベントであり、出演者は300組、来場数は5万以上にのぼるという。まさにアイドル戦場であり、アイドルとオタクとの熾烈な戦いが繰り出されている。
真夏の太陽の下、少女たちが美容の大敵であろう紫外線を浴びながら汗水垂らして笑顔で踊る姿に、ファンはエネルギーをもらうのであろう。
欅坂46にとってはデビュー以来はじめての野外ライブであり、はじめてのアイドルイベントでもあった。夏仕様にリニューアルされた半袖タイプのサイレントマジョリティーの軍服衣装を身につけて我々は進発した。
ステージに上ると、バリケードを破ってまで最前列を目掛けて一目散に駆けてくる大勢のファンがまず目に入った。そのせいにより発生した砂埃が落ち着くと、果ての奥まで豆粒のように人が溢れている光景が飛び込んできた。
いつもとは違ったファンの熱量に気圧されたのか、何人かのメンバーの表情が固い。対して地下アイドル出身のメンバーは慣れている様子でいた。
温室育ちの我々欅坂46は出演早々、TIFの洗礼を受けた。アイドル戦場への初陣は、経験の浅さを露呈して終わった。
私は未練がましくステージから降りると、不甲斐なさで涙が滲んだ。
「デビューして間もないから仕方ない」と言い訳はしたくなかった。
メディアによる洗脳の産物と思われるのがどんなに屈辱か。
他のアイドルにも、ファンにも、自分にも負けてたまるか。
他のアイドルにも、ファンにも、“欅坂46”の記憶を植え付けさせてやる––––。
負けじ魂が滾ってきた。一回目を閉じて、自分の心に耳を傾ける。“一生忘れることのないライブを届けること”が自分の使命だと私は考えた。そして、「ただのアイドル」には終わらせない「何かを伝えたいアイドル」に私はなりたいと強く思った。
1日が過ぎ、最後のライブが来た。今、フジテレビの湾岸スタジオに我々は立っている。相変わらずファンの熱量はすごく、リフトしている姿も所々見えた。ファンの勢いはスタッフの注意すら跳ね返ってしまうほどだった。
握り拳を胸にあてる。“歌詞の人物”はごく自然に“私”の中に入ってきた。観る人たちを睨視する。
一生忘れることのないライブを届ける––––。
私の中で、心魂に徹するように誓詞に血判を捺した。
ライブ中、頭がクラクラしてきて熱中症になったのだろうかと思った。突き抜けすぎた高揚感と緊張感によって、脳内では射精の時の心地よさに似たような成分が分泌されているのだろうか。次第に昂りがこみ上げてくる。
(ああ、なんだろ、この感じ……)
「ラストは『世界には愛しかない』です」
私の中で“歌詞の人物”が変わると同時に吼えた。
うわあああああ––––っ!
ライブに興奮しきった私は勃起させていた。梨加ちゃん以外で勃つのは初めてのことだった。汗と一緒に雑念も洗い流したかった私はステージから降りてすぐシャワー室へ向かった。
裸を見られては困る。鍵をかけてちゃんと施錠されているかどうか確認してから、ぽんぽんと衣装を投げ捨てて手前の個室に入る。解放感に私はテンションが上がったまま勢いよくコックをひねた。
強めのシャワーが気持ちいい。汗を流すが、雑念までは流れなかったのか屹立したままシャワーの水を跳ね返している。シャワーが降りかかってくる弓の雨に見えて、屹立している“それ”に勇敢に立ち向かう私の姿を重ねた。その逞しい分身に誇らしくなりながらご褒美をあげるように手を伸ばした。
梨加ちゃんと結ばれてからずっとご無沙汰だった自慰行為に耽る。
やはり、自慰は気持ちいいものだが、梨加ちゃんの肌が恋しい。というより、思いっきり腰を使いたい。ストレス発散するように乱雑に扱いだ。
よほど吐精したがっていたのか、射精するまであまり時間はかからなかった。躰をぶるぶる震わせ、精子を勢いよく放出させた。
タイルの床に撒き散らした私の精子が水に流されて排水溝へと消えていく。下水と共に流されているのがなんとなく腹立った。梨加ちゃんの奥に注ぎたい。夜が待ち遠しかった。
身体を拭いて更衣室に戻ろうとドアを開けたところで、私は意外な刺客に喫驚仰天した。