テーブルにお待ちかねの食事が運ばれてきた。
「きた!」
「おいしそおおお」
「やばい!」
さすが、年頃の女の子はうるさい。絶対、隣の部屋にも聞こえてるだろってくらい悲鳴に近い歓声を上げていた。実際、同席していたスタッフたちも耳を押さえながら苦笑いを浮かべている。
「私がよそうで」
大人しそうな子がおっとりした関西弁で率先して皆の皿によそいはじめた。私はかなりお腹を空かせていたので、とにかく食べたかった。よそってくれた皿が来た途端、がつがつと意地汚く食べる。
同じく、ボブの子が食事を頬張ってハムスターのように頰を膨らませては、喉に詰まらせたらしく、苦しそうに胸を叩いている。そばから鈴本がすかさず、飲み物を差し出した。見た目は大人っぽいが、ああいう姿を見るとやっぱり子供だなあと安心する。
平手友梨奈。14歳。グループの最年少で、数少ない中学生メンバーの一人だった。メディア初披露で「制服のマネキン」のセンターを務めた子でもあり、多くの人を魅了させる独特な雰囲気、そして、未知の可能性が恐ろしい––––。
「ちゃんと噛んで、ゆっくり食べなよー」
彼女はむせている平手の背中をさすりながら、母のような優しい眼差しを向けている。
鈴本美優。18歳。平手と同郷らしい。彼女は欅坂46に入る前は地下アイドルとして活動してたらしく、下積み時代の成果としてダンス能力は抜群だった。凛とした顔立ちの割には表情豊かで、小さな口が可愛らしい。あとよく寝る印象。
まだ打ち解けていないメンバーたちを見回すと、同郷の人が居て羨ましいなと改めて思った。
皆して駄弁りながら食事する中、行儀よく食事を進めている姿が逆に目立つ子がいた。ひとつひとつの作法がまるで「正しい食べ方」の教科書に載っているようだった。
菅井友香。20歳。あまり話したことはないのだが、楽屋で待ち時間の時に珈琲を啜りながら本を読んでいる優雅な姿からして、土田さんが唱えた“お嬢様説”に誤りはないと私はそう踏んでいる。それから、彼女が見せる穏やかな笑顔にはどこか安心感を覚える。
「お待ちどうさま~」
続いて、油っぽいこってりとした料理が次々と運ばれてきた。てかてか光っている料理を前に、そろそろ喉が乾いてきたなと思った。