「返事が……したい」
私が告白した人は優しい笑みを浮かべて、そう言った。それがOKサインなのか、それとも傷付けないように気遣っているのか、全く読めない。しかし、私の気持ちは揺るがなかった。どんな答えであれ、諦めない自信だけはあったから。
久々の快眠に気持ち良く目が覚める。両手を上げて背筋を伸ばしながら、大きく一つ欠伸をした。
朝食に向かおうと部屋のドアを開けると、昨日告白した相手がそこに立っているではないか。出会い頭に思わず「うぇっ」と変な声を漏らして、反射的に後ろへ飛び退いた。
ノックとかしてくれたら良いのに、と聞くと「起こしたら悪いから」と遠慮したそうだ。もしも深夜だったらホラーである。
「もう、びっくりしたぁ。私、結構ビビリなんですから……」
まさかこんなに早く会話を交わせると思わなくて、嬉しかったと同時に怖くなった。梨加ちゃんにしては珍しく神妙な顔をして、私を見つめていたからだ。
「……なんでしょう?」
「昨日の……事なんだけど」
胸が大きく波打つ。「昨日」といったら、もうあの件しかない。
神妙な顔から一転して優しい笑みを浮かべ、彼女は言った。
「返事が……したい」
思ったよりも早い死刑勧告に、今にも息が詰まりそうだった。「そうなんだ!」と答えた私の顔はどうしようもなく引き攣っていた。
「夕方。 皆いないと思うから……その時に」
梨加ちゃんは目を逸らさずに私を見つめている。
「わかった!」
そう返したものの、自然に笑えたかどうかはわからない。せっかくの休日は穏やかではなかった。
0