どうしましょう……。
私は今、まさに悩んでいた。
お嬢さま御用達の学校に入り、エスカレーター式で進学して決められたレールを歩んできた。私の親は厳格な人という訳でもなく、比較的やりたいことに関しては背中を押してくれるタイプだった。友達の誘いで馬術を始める時も賛成してくれたし、私がアイドルグループの応募を決意した時も「人生、何事も経験」と応援してくれた。
オーディションを次々と通過して21人の一人に選ばれた時、親は大いに祝福してくれた。
親は私の初めてのファンでもある。そんな私が体に〝異変〟が起きてしまった。 親に合わせる顔がなかった。失望するに違いない。初めてのファンの悲しむ顔など見たくなかった。
馬に揺られながら、あれこれと考えを巡らす。親と会う機会があまり少ない寮生活のメンバーのことが初めて羨ましいと思った。
アイドルグループに応募することは私にとって、初めて自らの意思で人生を開拓することだった。ところが欅坂46に踏み入れたその先は、これまで経験したことのなかった迷宮のような交差点が広がっていた。
私の進む先には一体何があるのだろうか––––。
そうこう考えているうちに今日が来てしまった。
鏡を見ると、顔に憂色をたたえている自分がいた。アイドルとは思えない酷い顔。硬直した顔の筋肉を無理やり動かして笑顔を作ってみる。
鏡の片隅に、振り付けの確認に励んでいる平手ちゃんの姿を捉えた。
平手ちゃんは凄いなぁ。私より5つも年下なのにしっかりしていて、センターというプレッシャーに立ち向かって堂々と前を向いている。
「そろそろですよ~」
スタッフさんの呼びかけに気を引き締める。
私も、前向かなきゃ。弱気な自分に鞭打ち、立ち上がる。
ステージに上がると、観客の熱気に呑まれて一瞬怯むも親の顔が浮かび、踏み堪える。
お父様、お母様。親不孝者でごめんなさい。
これが私の初陣でもあります。どうか見守ってください。
不安を握り潰すように拳を握りしめて、胸に当てる。
(迷宮大歓迎! 百万馬力で迷宮を駆け抜けてみせます––––)