力加減ができない♡

私の好きな人、鈍感なんだけど。

 

 

 こっちがいくら色仕掛けをしても、笑顔でさらりとかわす好きな人。彼女が見せる大人の余裕にもしかしたら、と思った。純粋無垢そうな笑顔を見せといて実は、これまでに色んな恋愛を経験してきたのではないか。
 勝手に抱いていた彼女への幻想、「箱入り娘」ではない可能性に胸が苦しくなる。

「友香!」

 私の好きな人の名前が他の女によって呼ばれた。私にも見せている笑顔を、他の女にも見せる友香。ほおづえついて友香を目で追っている私はため息をついた。

 こちらが大人の女性っぷりを見せて、友香があたふたする構図が理想だった。しかし、現実ではこちらが一方的に必死になっている構図だ。恋の折れ線グラフはずっと横一線で上昇する気配はない。

(こんなの予定と違うじゃない!)

 トムのときだってそうだった。友香から「トム」の名前を聞いた時はかなりショックを受けた。私は失恋したのだなと泣きそうになったのに、友香は人の気も知らずにヘラヘラしているし。正体は猫だというし。

 何よりも気に入らないことは土生と仲がいいことの一点だった。
 話題がゲームだのアニメだので二人の世界になることが多く、趣味が管轄かんかつ外の私が同じ土俵に立てないのが悔しい。頻繁に撮る二人のツーショット姿を見る度にチクリと胸が痛むのを感じながら、嫉妬を顔に出さないよう努めた。

 さらに、好感度のかたまりの彼女はファンに、メンバー、スタッフ、全員から好かれていた。そして、メンバーからもモテる。
 本人の耳に入っていないことを祈るが、ガールズトークでも友香を旦那にしたい意見が多数を占めていた。彼氏にしたい、ではなく、旦那にしたいのが重要である。
 色んな人に屈託くったくのない笑顔を振りまく友香に、余裕のない私はだんだん苛ついてきた。節操せっそうなし、と女々しくつぶやく自分に嫌気すら感じる。

 計算して小悪魔を演じている私よりも、天然で私をときめかせる貴女の方が小悪魔なのは一体どういうことなのか。いや、友香は優しいから私の“小悪魔ごっこ”に仕方なく付き合ってくれてるのかもしれない。

 私はあまり頭で考えるのが得意ではない。学生時代の部活の恩恵か、考えるより行動するタイプの私はどうしても友香に触れてしまう。
 そして、私は力加減が出来ない人間だ。アイドルにもスポーツにも美容にも、恋愛にも。

 土生と楽しそうに戯れる友香を見て、私は闘志の炎を燃やしていた。

 

 

絶対、落としてやるんだから––––!

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