「誰にも言ってない過去の自分の話があるんです。乃木坂さんの映画を超える自信があります」
笑顔でインタビューに答える彼女は今泉佑唯。「言えない過去がある」と語るその瞳には一体どんな過去を映してきたのだろうか。
私のアイドル物語は苦労の連続だった。
欅坂46加入まで、長かった。しかし欅坂46加入自体はそこまで嬉しいことではなかった。
小学生の頃、アイドルグループに所属し、年も大きく離れたファン達に囲まれることで私のアイドル物語の幕が開ける。
この時、小学生にしては不相応な、いやらしいポーズをとって喜びのシャッター切らせるなどして、次第にファンの扱いを覚えていった。羞恥心はなかった。仕事だったのだから。
お陰で、ファンへの対応は鍛えられた。
私には「ソロ歌手デビューする」という夢がある。それは野心といってもいい。
夢のためなら、水着DVD出すこともいとわなかった。路上ライブで通りすぎる客を目で追いながら歌う悔しい思いもした。
少しでも夢に近づけるためなら、どんな手段でも選ばないできたし、それは決して素晴らしいとは言えないこともしてきた。この時、汚い大人も幾人か見てきた。
このせいもあってか、学校では噂の格好だった。クラスで浮いてた私は教室の隅っこで現実の世界と遮断するようにイヤフォンをするのが日常だった。
高校に上がり、転機だと思った私は一念発起して某コンテスト番組に挑み、歌を披露したものの、審査員の評価は次の一言だった。
「アイドルに行った方がいい」
これは大きなファン達に恥ずかしいポーズをとることよりも、水着DVDを出すことよりも、路上ライブで無視されることよりも。遥かに屈辱的で、酷な現実でもあった。
それからというものの、審査員の助言に甘んじてアイドルの道を行くことにした。ソニーミュージックの特待生として、欅坂46に加入することは約束されたようなもので、オーディション自体は出来レース同然だった。センターに立つことも当然のことだと思われた。
平手友梨奈に出会うまでは––––。