~調子に乗りまーちゅん~
コンサート前日、部屋割りで彩と美優紀がペアになった。私はというといつもの相方とペアだ。
「はぁ~最後の夜ぐらい茉由と過ごしかってんなぁ。なんでしゃくれと…」
ふてくされた口調で続ける美優紀。彩もムッとしたのか言い返す。
「おい誰がしゃくれや。私やって茉由と過ごしたかったわ」
いつもなら夫婦漫才の流れのはずが、どことなく二人の間に流れる険悪ムード。茉由は正直、内心は面白くて仕方なかった。
「まぁまぁ二人とも私の為に喧嘩しないでぇ~」
「調子のんなや、色欲ビリケン!」
ピリピリした空気を和らごうとおちゃらけてみた私にりぽぽのチョップが頭に降り注ぐ。
コンサート当日。リハーサルで彩と美優紀は調子悪いのかミス連発していた。さやみるきー名物、シンクロダンスも全くお目にかからない。ツートップらしくもない。
噂によると昨晩、二人の間になにかあったらしく、今ギクシャクしてるとのことだった。
私は建前では心配しつつも「恋敵が一緒の部屋に居たらそらギクシャクするもんな~」と黒い一面を覗かせていた。
休憩に入ると、美優紀が目を輝かせてこちらへと駆け寄ってきた。
「茉由~疲れたぁ、凹んだぁ。元気出るためにちゅーして」
いつものように甘えてくる難波のお姫様。
やれやれ、付き合ってからって言ったろ。
私はそれを見越して既にキスの準備は整っている。あとは美優紀を癒すために受け入れるだけだ。
「はいはい、可愛い子猫ちゃ…」
「美優紀! ちゅーしとる場合ちゃうやろ!」
私と美優紀との唇の距離10センチの所でキャプテンの怒号によって美優紀の動きが止まった。場の空気が凍った。彩は深くため息吐くと、美優紀の手を強引に引き、どこかへと連れていった。
「コンサートまで時間ないのに大丈夫かな……」
「山本先輩と渡辺先輩、ちょっとギクシャクしてない?」
二人が不在になってから不安の声をつらつらと挙げるメンバー達。流石、ツートップの影響力は絶大だ。
少し調子乗りすぎたかな、と反省の色を見せた茉由。
ここはやはりツートップが首ったけの私が動かねばと駆け出した。やはり反省していなかったようだ。
「ちょっと茉由、行ってくるわ!」