~誘惑しまーちゅん~
モテ期真っ最中の私が、やることは一つ。さやみるきーと付き合うこと。これは今まで頑張った私に神様がくださった御褒美じゃ、無駄にするわけにはいかない。二人とも私の虜にしてくれる。
最初のターゲットは彩、そうと決まれば即行動。彩の所へ向かった。
会うなり、少年のような笑顔を浮かべる彩。他愛もない話を繰り広げた後、核心に迫った。
「なぁ、好きな人おるやろ?」
わざと首を傾げて聞いてみた。もし、りぽぽが傍にいたら「なに勘違いしてんねん」と頭引っ叩かれていたであろう。我ながら片腹痛いが私なりに考えた精一杯の可愛いアピールや。
図星だったのか、顔を赤らめる彩。わっかりやすいなぁ、ちょろいなぁと思いつつも彩の肩に手を置く。
「自分の気持ちに素直になろうよ~想いって伝えるもんやで? 茉由なら想い伝えてくれた方が嬉しいな……」
言葉に含みを持たせて、目をそらしつつ照れる素振りを見せる。
決まった。完璧や。茉由、最高に可愛い。
茉由の鼻が伸びてきたところで、いきなり彩の香りがしたと思ったら、私は彩の両腕に包まれていた。抱き寄せられたという情報が遅れて脳に行き届いた。
「ほんま有難う。茉由の言う通り、素直は大事やな。分かった、でも待ってくれ。ちゃんと告げるから」
耳元で囁く彩。あっだめ、耳は弱いの……というおふざけは抜きにして、正直キュンときた。彩のナチュラルにこういうことが出来るところはほんまに反則やと思った。
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次のターゲットは美優紀。ニヒル笑いを浮かべながら美優紀の元へ向かった。
「茉由!ちゅー」
会うなりキスをせがんで抱きついてくる美優紀。やれやれ、困った子猫ちゃんだ。しかし、ここは美優紀のキスを制する。制されると思わなかったのか、なんでよと口を尖らせる美優紀。私は精一杯のイケメンボイスでクールに囁いた。
「そういうのは好きな人にした方がいいんやない?」
美優紀も案外わかり易い性格をしていたのか、顔を赤らめた。不覚にも可愛いと思ってしまったが、ここはイケメンモード。美優紀を抱き寄せた。美優紀の方がちょっと高いので格好つかなかったのは内緒。
「キスは好きな人と付き合ってからするもんやで」
女子がされたいランキングナンバーワンらしい、極技〝頭ポンポン〟を美優紀にしてみた。
決まった。完璧や。茉由、最高にイケメン。
美優紀はうん、とはにかみながら頷いた。おい可愛いなこの生物は、と悶えつつも懸命にイケメンモードを保った。
りぃちゃんに振り回されてるイメージが定着している私だが、今度は振り回す立場にいる。振り回す楽しさを知った茉由は勝ち誇ったように鼻を膨らました。
さやみるきー界隈のファン諸君。現実では [さや→まーちゅん←みるきー] だそうですよ。
幼稚園以来のモテ期は酒に溺れてるような快感だった。
甘美な感情に支配されていた茉由は思わず高笑いをあげた。その勢いで唇が切れたのか我に返ってポケットからリップクリームを取り出し黙々と塗る茉由であった。