恋する乙女の巻

 ついに来ました、セカンドシングル選抜発表の日が。

 

 

 小林や鈴本に長濱と、見慣れないメンバーが2列目で呼ばれたこと以外はいつも通りの並びとなり、最後の2枠も私と茜が呼ばれて2列目の発表が終わった。
 私の隣に歩んでくる茜と目が合い、思わず緊張がほぐれる。今回のポジションも、私と茜はペアでシンメになっていた。

 

 私はアイドル失格でしょうか。フロントに上がることよりも、茜が隣にいることで安心と嬉しさを覚えてしまいました––––。

 

 収録後、茜が手を握ってきた。私は表面ではリラックスしている姿勢を見せつつ、心拍数が上がるのを感じていた。私は本当に茜に恋しているんだなあ、と確信した私は降参するように静かに笑った。

「友香、また一緒になったね」

「うん。また一緒に、セカンドシングルも最高なものにしようね!」

「ん、友香。いつもより頼もし~」

 茜はたまらなさそうに、ぎゅーっと抱きしめてきた。いつもより、は余計だよと心の中で突っ込んでいると、色白で端正たんせいな顔が目の前に迫っていた。私は思わずドキッとして目を見張った。

 いかにも気の強そうな彼女の整った容貌ようぼうを見詰める。服装によっては若妻にも見えそうな大人びた顔つきは色っぽくあり、左目の下にある泣きぼくろがより官能かんのうさを増す。たった2歳しか違わないのに、彼女からは妙な色気を感じさせている。

 心の揺らぎにつられてか、頭もクラクラと揺れてくるのを覚えた。胸が踊ったり苦しくなったりと、忙しい様は完全に恋する乙女モードであった。

 

 ああ、駄目です。ただでさえ2列目で仲良しの人と隣同士になれて喜ぶ時点で駄目なのに、こんなに胸をときめかせるなんて––––私はアイドル失格です。

 

 いけないいけない、年長者組が風紀を乱してどうする。ただでさえ、頼りないんだからえりを正せねば。自分勝手な理由で誘惑に負けちゃ、周りにも影響を与えてしまう。
 ひたすら「恋愛禁止」の四文字を頭に浮かばせて、自分をいましめるように想いを抑え込んだ。

 

 

 それから三日後、風呂から上がり、メンバーたち全員のブログをチェックすると、茜のブログが更新されていたことに気づく。誰よりも真っ先に茜のブログを開いてしまうという、単純な自分に自嘲じちょうするしかなかった。

 

2016.06.29
長いので最初に言っておきます。今日は長文ブログ~⁈。

こんにちは
なかなか毎日ブログを書くことが出来ず、
ゴメンなさい(>_<)

今日は選抜発表のことを書きます。

不安で頭がごちゃごちゃしていました
そんな中で
前回同様ゆっかーとのシンメの2列目センターポジション
をいただけて安心したのと嬉しさがありました

新ポジションは
前回と変わり、ゆっかーとわたしは入れ替わりの位置ですが
センターのてっちゃんの後ろでまた一緒にシンメで並んでいますで
今回も私たちゆっかねんにも注目してくださると嬉しいです♡

 

 きゅ~ん……と恋のオノマトペがかなでた。
 ああ、頰が熱い––––。

 私も茜が隣で安心したし、嬉しかった。茜も同じこと思っていたなんて。嬉しさと愛おしさがこみ上げて来て胸が高鳴るのを覚えつつ、ベッドの上でウキウキと転がり始める。ファーストシングルと続けて、シンメトリーの位置になるなんてもしや「運命では?」と考えた私の脳内は完全にお花畑状態だった。
 同時に平手と渡辺のことも頭をよぎったが、振り払うように頭を振る。

 

 まだ一人前になってもいないのに、その考えはあまりにも傲慢ごうまんではないか。謙虚けんきょを忘れてどうする。

 

(平手は平手。それに彼女は頑張っているから許されているようなものだよ、ねっ、私?)

 考えれば考えるほど、冷静になるというよりは狂おしくなって動悸が激しくなるだけだった。

(いけない、駄目)

 私は、アイドルだ。それに、年長者だ。そして、欅坂46の一員だ。
 私は仲間たちにも、ファンたちにも、親にも、茜にも誠実でありたい。
 切なさに胸がいっぱいになり、それを吐き出すように嘆息たんそくした。

 

 お父様、お母様。恋って忘れることができますよね? 時間が解決してくれるはずですよね––––?

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