最年少はかつて消極的だった

「てちこ見なかった~?」

 びっしょり汗に濡れた今泉がタオルで拭きながら尋ねてくる。

「あー」

 そう言った後、考えを巡らす。それでも言葉が見つからず「えっと」と繋いだ。

「ごめん見てないや」

「そっかー残念」

今泉はがっかりした顔で言うと、踵を返してスキップを踏むような足取りでどこかへ行った。

(言えるわけないよ。さっき、平手が梨加に告白したなんてーー)

 盗み聞きするつもりじゃなかった。二人がいなくなったので探しに行ったら、その場に出くわしてしまっただけで。幸いなことに、二人とも私の姿には気が付いていない。梨加ちゃんのごく低い声は聞き取れなかったけど、平手の愛の告白ははっきりと聞こえた。

 平手の告白は不器用で拙くて、真っ直ぐだった。

 メンバー同士の恋愛模様を目の当たりにして、少し仕事しづらくなると思うと複雑な気持ちになる。しかし、合宿の時は消極的で縮こまっていたあの平手が自分から想いを伝えるなんて。
 女同士とはいえ、純粋な恋愛現場に胸がキュンとせずにはいられなかった。ここ短時間での平手の急成長をまるで自分のことのように喜んでいる自分がいる。

 平手。お姉ちゃん、応援するよ––––。

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