レッスン後、ちょっと集まりませんかということで例の5人で集まった。
「疲れますよね……」
「ちょっと男性の気持ちが分かった気がする」
例の件から皆、ひどく気疲れしていた。菅井が丁寧に手を挙げて発言する。
「レッスン中とかで反応しないか心配で……」
下半身問題に触れた後、誤解を招く発言だと思ったのか、すぐに付け加えた。
「あ、でもメンバーに興奮するとかそういうわけじゃないんですけど」
皆も「分かってるって」と協調するように頷いた。下半身トーク。まるで思春期を迎えた男子トークのようだ。皆、真剣に悩んでるわけだが。
最初、股間にいつもの見慣れたのじゃないモノがあるのには青褪めたけど、人間の順応性は実に恐ろしいもので、今は日常生活に支障なく過ごせている。特に困ったことといえば、多少局部が大きいということぐらいか。
「どうしたらなくせるのかな」とか「一生そのままなのかな」だとかそういう良からぬ未来が心を支配していた。考えれば考えるほど不安の渦は広がっていくばかりだった。
年明けにて私たちの一件が皆に伝えられたその翌日、寮の廊下で愛佳とばったり会った。例の事で、変に配慮した私は彼女と距離を置こうとしたものの、彼女はそれに気付く気色もなく。
「おっす」
と、いつものように肩組んできては「だりー」とかいつもの気だるいトークとかしてきた。ただ、「襲うなよ」は一言多いけど。
前と変わらない関係を築いてくれてるおかげで気遣わなくて気が楽だ。愛佳は誤解されやすいかもしれないけどいいやつだ。
会議はいつものように何か進展があるわけでもなく、お開きになり、戻ると葵がパタパタいわせてこちらに駆け寄ってきた。
彼女が4月で晴れて高校生になった事実を誰が信じるだろうか。どこからどう見ても小学生にしか見えなかった。
「ねーねー聞いて聞いて」
私の腕をぐいぐい引っ張りながら構ってちゃんモードに入る。いつもは少しウザく感じたのが今回はそれすら有難く感じた。
前と変わらず接してくれる愛佳と葵。この二人を、私は大切にしていきたいなと強く思った。