「…楽しみな事でもあるんですか?」
撮影中、いつも以上に精が出ている珠理奈にぱるちゃんが不審に思ったらしい。珠理奈はこれをチャンスと思わんばかりに、花火大会に連れ出す口実を作り出した。
「うん! ぱるちゃん! ねぇねぇ、このグラビアが終わったら付き合って欲しいことあるんだけど」
ぱるちゃんは首を傾げた。「なんだろ?」と言いたげに。
珠理奈の調子が良く、ぱるちゃんをリードしたお陰もあって撮影もトコトン拍子に進み、予定より早めに終わる事が出来た。着替える準備をする二人に駆け寄ったスタッフがひとつ提供する。
「今日、近くで花火大会があるんだって。二人とも息抜きに行ってみては?」
「行く行く! 行きます!」
花火大会、というワードに過剰に反応して即答する珠理奈。ぱるちゃんは疲れたのか、眠たそうに目をこする。
「ねね、ぱるちゃん。さっきの願いね、花火大会の事なんだ! 実は…」
じゃーん! というと、得意げに二つの袋を前に突き出した。
「二人分の浴衣も持ってきましたー!」
ぱるちゃんの瞳がぱちくりいわせた。この反応を見るに予想外だったのか驚いたらしい。暫く間があったけど、ぱるちゃんが首を縦に振ったので、これは承諾したんだろうと判断した珠理奈は浴衣をぱるちゃんに半ば押し付ける感じで渡して着替えを急かした。
珠理奈の浴衣はブルー調でクール系、ぱるちゃんの浴衣はピンク調でキュート系だった。
「うわうわー、流石ぱるちゃん可愛いよ! 着こなしてるね!」
思ったことを言葉に出しちゃう性分の珠理奈はカワイイ連呼する。ぱるちゃんは照れつつもいやいやと謙遜する。その2人の対照的な性格は、浴衣にも表れてるようでその構図は面白く微笑ましかった。
「実は、穴場まで確保してるんだ。時間ないし、ほら行こ! ぱるちゃん」
ぱるちゃんの返事を待たず、強引気味に手を引いて一目散に走り出していく二人。一方、てっきり祭りに行かれると思ったスタッフ一同は呆気に取られながら穴場に続く小道へと消えてく二人の背中を見送った。