「部活は何してたの?」
「山形出身だよね? あそこって何かある?」
「ダンス上手いけど、なんかしてたの?」
私たちはもう“はじめまして”ではないとはいえ、知り合ってまだ三ヶ月。アイドルという職業を除けば、そこらの女子高生となんら変わりない。
クラス全員と仲良くなれるわけではないように、あまり話したことがない人も当然ながらいる。初めて話す同士のメンバーが、ぎこちない笑みと軽いお辞儀をして歩み寄る、初々しい姿がところどころ見られた。
名刺交換とばかりの質問合戦が繰り広げられている中、私は軽く相槌を打つことで参加の姿勢を見せつつも、箸を休めることなく食べ物を腹に詰めていく。
私は友達作りにあまり意欲が湧かなかった。
(いや、湧かないと強がっているだけか)
時折チラリと、私のことを気にかけている視線を感じる。私は話しかけにくいらしい。それも、慣れている。
(でも、友達なんて本当に仲がいい人だけでも十分じゃん)
自分自身とお喋りをしながら、あまり食べる機会のないリッチな料理(あくまでも私にとってはではあるが)を頬張る。まさに、花より団子だ。
立ち上がった女性スタッフが、手を叩いて皆の関心を集めた。
「皆さん、こんなに食べたら太っちゃいますよ~」
「やだ~!」
悲鳴を上げるメンバーたち。
「ダイエットの味方、黒烏龍茶を全員分頼みましたよ~!」
「いえ~い!」
歓声を上げるメンバーたち。黒烏龍茶のボトルが置かれ、スタッフが引率して皆のグラスに注いだ。
「ありがとうございます!」
烏龍茶を受け取った子は、はきはきした声でお礼を言うと、ニッと片八重歯を覗かせた。元気かつ真面目な姿勢が好印象を与えた。
土生瑞穂。18歳。グループイチの高身長で、美形というモデルのような女の子だ。初めて顔を合わせた時の衝撃は忘れもしない。現に、メンバーの何人かが憧れの対象となっている。そんな美貌とは裏服に、趣味がオタクらしくコスプレやったりと、決してキャラではない二次元愛が伝わる。美人のコスプレは嫌味を感じないなと思った。
「でねぇ、課題がすんごい多いの。美大って課題が多い宿命だから仕方ないけどぉ。でも、これだけ多いと見るのも嫌になるっていうかぁ」
掴み所のないふわふわとした口調で、さっきからひきりなしに喋り続けている。
佐藤詩織。19歳。美大生で絵も上手く(リアルすぎるあまり恐怖すら感じるタッチだとは思うが)、バレエも上手でおまけに、日本人には珍しい長足の持ち主でモデルのようなスタイルをしていた。完璧なお姉ちゃんである。欠点といえば、話が長いということくらいか。
隣で守屋がいい加減に相槌を打ちながら、食事に集中しているようだった。
(聞いていないな、こりゃ)
佐藤にも守屋にも、どちらにも同情する。
「そうなんや、授業に水彩画はあるん?」
守屋とは対照的に、にこやかにおっとりした関西弁で話している。
小池美波。17歳。兵庫県出身の関西人で、はんなりとした関西弁を喋る子だ。色白でよく伸びるもち肌に、ロリロリしい甘ったるい声が、多くの男性のハートを鷲掴みにしてやまない。ペンギンをこなよく愛しており、クソゲーと酷評のペンギン育成ゲームで4mまで成長させているとか。
そこで、スタッフが呟いた。
「あれっ、もう切れちゃった」
「追加お願い!」
自分の番の前で途切れて「喉乾いた」と彼女は不貞腐れたように言った。
上村莉奈。19歳。冠番組の初登場時は妖精のようだと持て囃されていたのが今では、「ブハブハ」と弄られている。年上には見えないくらい童顔で、陶器のような白い肌とぱっつん前髪に長くまっすぐな漆黒の髪は、まるで和風人形のようだ。ドルオタ受けは良さそうな子ではある。
「じゃ、私のをあげるよ」
彼女は受け取った烏龍茶を、上村に渡した。
尾関梨香。19歳。冠番組「欅って、書けない?」で一度見たら脳裏に焼き付いてしまうほどインパクトの強い「尾関スタイル」で爪痕を残しまくっている。人を想って涙を流すことができる心優しい女の子でもある。
そして、追加の2ボトル目が来た。