本日も熱々な私たちお嬢様カップル。もちろんメンバー達には非公認だ。
例の衣服騒動の件で芸能活動は一時休業になり、思わぬ暇を頂くことになった私たちは戸惑いを感じていた。
今、私の部屋に友香がお邪魔しに来ている。“欅のための活動”という名目で僅かな逢瀬時間をこっそりと愉しんでいる。
一応、両性具有である友香を部屋に招いているわけだが、疑う者も囃す者もいない。私たちはどうやら懇ろな間柄にはならないと思われているようだ。それは友香が間違いを犯す心配は一切無いと侮られているというのもあるが、私が生物学上れきっとした男性にしか興味がない女性だと思われているらしい。それは安心するようで、ちょっと複雑だ。
にこやかに私のテニス部時代のアルバムを吟味している恋人を、私は浮かない顔で見つめる。
サードシングルでフロントに躍進した私は天に昇る心地––––というわけでもなかった。自他共に認める負けず嫌い代表の私は、弱気な自分がのぞかせていることに気づいていた。
デビュー当初の私は「自分はセンターに立つ人間」だと自負し、実際豪語した記憶がある。それが、今となってはすっかり萎んで、フロントに立っただけでこうも心細くなっている有り様だ。
アイドルは可愛ければチヤホヤされるものだと思っていた。努力すれば褒められるものだと思っていた。手厳しい批評を浴びる機会の方が多く感じてしまう私は結局、被害者意識が強い単なる女の子に過ぎなかったのか。
(私なんでこんなにもやもやしてんだろ)
俯きがちに友香の背中に抱きつく。いつもなら生地が厚く固い造りとなっている欅坂の制服のせいで熱が伝わりにくかったのが、今は友香の体温がちゃんと伝わってくる。じんわりと胸に甘いような苦いような味が広がっていく。
「ゆっかー」
「はーい、どしたの」
ここからは顔が見えない。きっと嬉しさでにやけているに違いない。それだけは自惚れたっていい。
「ねぇサードシングル、うまくやっていけるかな」
「いけるよ、茜もフロントに選ばれたしね! てちも頑張ってくれるよ、きっとね」
ぱら、とアルバムの頁をめくる音が一定間隔で聞こえる。友香のお腹に回した腕を、さらに力を込める。
「隣はゆっかーがよかった」
アルバムをめくる音が止んだ。
「離れ離れになって寂しいし、心細いよ……」
私はとうに涙声になっていた。
(駄目だ、泣いちゃう……)
涙を零したら、もう止まらなかった。ずっと私の中を取り巻いていたモヤモヤの正体が、本音となって私の口から溢れ出てくる。
「だってさ、実質二列目が本命みたいな感じじゃん……そこから外れてる私って」
と、自分で言っておきながら激しく傷ついた。罪悪感が胸に広がって苦しさを覚える。
ああああああもう!
あとちょっとだったのに!!
ゆっかねんの大人な恋愛、大好物です。
コメント欄うるさくしてすみません。
続き気になって夜しか寝れないので
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