ちょっとは甘えてもいいかな、と思った。頼ってみてもいいかな、とも思った。とにかく、恋人らしいことがしたかった。
渡辺梨加は相変わらず長沢とつるんでばかりで、グループに参加するというより、個人プレーに近かった。
「梨加ちゃん~」
私は後ろから、いきなり梨加を抱きしめた。花のいい香りがする。
「んー友梨奈ちゃん」
梨加は照れながらも、「皆がいるから後で」と小声で耳打ちした。
その薄情さが、次第に恨めしくなる。それでも私は甘えるように、さらに抱きついた。
「ねぇ、ダンスちょっと見てくんない?」
梨加の瞳が瞬いて、「なんでダンス下手っぴ組の私に聞くの」と言いたげだった。
(分かってる。……そういう意味じゃないってば)
「美愉ちゃんなら、あそこにいるよ。ほら、あそこ」
梨加は優しい顔で、美愉のほうを指し示してくれた。彼女は、私を拒絶したいわけではない。
ポンコツだからこそ、せめて「少しはしっかりしているお姉ちゃん」というメンツだけは保ちたい。そんな思いがあるのだろう。
本当に悪意はないのだ。それが、なぜだか私を苛立たせる。
言葉を呑み込もうとした。だが、呑み込むには私の精神年齢も、心の余裕も足りなかった。
「もうちょっとさぁ、協力的になってくんないわけ!?」
とうとう梨加に声を荒げてしまった。梨加は予期していなかったのだろう。驚いたあと、口を丸めて、ひどくしょげた。
「てちも、そこまで言わなくてもいいのにね」と梨加をかばう声。
「なに? 痴話喧嘩?」と揶揄する声。
「てちも疲れてんだよ。ほら、始めよう」と気まずさを断ち切る声。
メンバーたちの、気遣うような眼差しが刺さる。いっとき、ねるの視線も感じた。だが、彼女はすぐに逸らしてくれた。
ああ、嫌だ。この感じ。孤独だ。ひどく疲れた気がした。