摩滅

 有明のワンマンライブまで、あと二週間に差し掛かっていた。
 ひらがなけやきたちは熱心にダンスレッスンに明け暮れていた。ひらがなけやきは一応、欅坂46の妹分的なグループだと思う。だが正直、その立ち位置は非常に曖昧だった。
 欅坂46のアンダーかもしれない。二期生かもしれない。あるいは、別グループかもしれない。私たちは宙ぶらりんのままだった。

 運営は隠し球として温めているのか。それとも、行き当たりばったりなのか。その企図は、我らメンバーですら掴めていなかった。

 誤解を恐れずに言えば、長濱ねるを加入させるために急ごしらえされた、間に合わせのグループなのだ。「ねるwithひらがなけやき」の先が透けて見える。

 不憫な彼女たちの心境を思うと、やりきれない。だが彼女たちは気にした様子もなく、むしろ楽観的で、スタジオは華やいでいた。
 胸の奥に、言えないものが沈んでいた。

(ひらがな達すごい……私たちも頑張らなきゃ)

 この頃、欅坂46に対する批判の声も目立つようになってきた。人気者の宿命と言えば、それまでかもしれない。内容はこうだ。

––––仕事に対する姿勢がよろしくない。

 もっと厳密にいえば、欅坂46のバラエティ冠番組「欅って、書けない?」での態度が、あまりよろしくないということだった。端的に言えば、つまらない。
 他グループ、AKB48Gや乃木坂46は、自分たちの番組を面白く盛り上げるために積極的に参加している。それに対して欅坂は、他力本願の姿勢が目立つ。そんな印象らしい。

 正直、私にも自覚はある。思うところがある。

 元々、欅坂46のメンバーは大人しい子が多く、俗に言う「陰キャ」的な雰囲気があった。全体的に主体性に欠け、消極的な姿勢が目立っていた。

 私の欅坂での役割といえば、センターだけではなかった。グループのまとめ役、ダンスの指導役。気づけば、その多くを背負っていた。
 重荷だ、と感じる。白状すれば、すべて投げ出してしまいたい自分もいる。私はこの現状を憂えている。

 今日も欅坂46は、多忙ながら平和だった。私たちは、友達でも家族でもない関係を築きつつあった。仲良く談笑する皆の頭の片隅では、きっと同じ考えが渦巻いていたのだろう。

––––果たして、このままでいいのだろうか。

 しかし、誰も動こうとはしなかった。気づかないふりをしていただけなのかもしれない。それとも、何をすべきか分からなかったのかもしれない。
 私の希いは、ただひとつ。欅坂46のメンバーが誰も欠けることなく、これからもずっと一緒にいたい。欅坂46を守りたい。

 そのためなら、私はセンターという重い荷を背負う。それが今の私の「使命感」だ。

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