初デートの巻

 ラストはいよいよ、良縁成就と恋愛成就に御利益がある、野宮大黒天だ。そこにある「お亀石」に祈りをこめて撫でると、一年以内に良縁に恵まれるとか。
 話を聞いた茜は早速、亀石を丹念たんねんに撫でている。その必死っぷりが実にいじらくて、それが余計複雑な気持ちにさせる。茜から湯気のように、ハートマークが立ち昇っているのは気のせいだろうか。
 私は妙にメランコリーになっていたのを断ち切るように、亀石を力いっぱい撫でた。もはや摩擦まさつであった。

(恋の神さま! 今だから言いますけど! この気持ち、苦しいです! どうしてくれるんですか!)

 神様に八つ当たりするように、亀石を擦りまくる。周りからクスクス笑う声がしたが、この恋の痛みと比べたら屁の河童だ!

(ああ、でも、茜は絶対に幸せにしてあげてください! それが私の望みです)

 最後は、ひとつだけの切なる願いを込めて優しく撫でた。
 茜に彼の人がいるのには胸をむしられるが、彼女を恋人にして幸せにするという度胸が、自分にはなかったというのも否定できない事実だった。
 祈り終わった茜はいつになく上機嫌で、私にべったりとくっついている。

(これでいいんだよ、これで––––)

 神社に参拝して、気持ちを新たにするどころか、すっかりよどんでしまっていた。

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2件のコメント

  1. インターチェンジ面白すぎて一気に見ました!
    次の更新はいつですか?
    待ってます!!

    +1

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