三品目

 油っぽい料理は口の中の水分を思いっきり奪っていく。飲み物が進む。愚かにも、炭酸類を頼んだことを後悔し始めるのであった。

「あぁっ!」

ガッシャン

 皆、一斉に音がした方に顔を向ける。梨加ちゃんがコップを倒してしまったようで、飲み物を派手にテーブルにぶちまけていた。

 渡辺わたなべ梨加りか。20歳。グループの一番お姉ちゃんで、一番美人で、一番ポンコツ。勉強や運動はおろか、コミュニケーションを取ることもままならない。しかし、良心を持っていたらしい神様が彼女に与えた、女神のような美貌という免罪符を彼女は持っていた。お陰で、「可愛いは正義」ということを証明できているのだ。

「梨加ちゃん、大丈夫!?」

「私が拭くから、自分の服乾かしな」

「梨加ちゃん、ドジだね。服拭いたげる!」

 ポンコツぶりに慣れてきたメンバーたちが皆して、彼女の身の回りのお世話をし始める。そう、お姫様のように扱っているのだ。
 世の中は結局顔だなと思った。私たち全員を映している壁の鏡を見ると、周りの女の子が可愛くて私は自信をなくしてしまった。アイドルグループなので可愛い子が集まるという、当たり前すぎる掟に私は凹んでしまった。

「やだ! 私、理佐ちゃんの側にいたい!」

「うるさい! なんでこっち来るの? 謝って!」

 なんだか女王様と下僕のようなやり取りが聞こえた。

 原田はらだあおい。15歳。彼女は自分と同じ高校生には見えないくらい幼かった。小学生と弄られているが無理もないと思った。いや、我々が老けすぎてるだけなのか。番組ではあまり伝わらないかもしれないが、結構しっかりしている面もある。

 渡邉わたなべ理佐りさ。17歳。最初は大人しくて地味な子だと思ったが、ショートカットにして美少女へ変貌を遂げる、嬉しい誤算が生じた。かなりの美形なのに、笑う顔はとても可愛らしく、多くの女性のハートを奪っていた。私もその一人だった。ショートカットにして正解だと思う。あと、番組ではあまり伝わらないかもしれないが、見た目に反して結構幼い面もある。

 

 皆のソフトドリンクがそろそろ底を尽きだした頃、スタッフたちがウェイターを呼んでなにかを頼んでいる姿を横目に、温くなったコーラを飲み干した。

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