油っぽい料理は口の中の水分を思いっきり奪っていく。飲み物が進む。愚かにも、炭酸類を頼んだことを後悔し始めるのであった。
「あぁっ!」
ガッシャン
皆、一斉に音がした方に顔を向ける。梨加ちゃんがコップを倒してしまったようで、飲み物を派手にテーブルにぶちまけていた。
渡辺梨加。20歳。グループの一番お姉ちゃんで、一番美人で、一番ポンコツ。勉強や運動はおろか、コミュニケーションを取ることもままならない。しかし、良心を持っていたらしい神様が彼女に与えた、女神のような美貌という免罪符を彼女は持っていた。お陰で、「可愛いは正義」ということを証明できているのだ。
「梨加ちゃん、大丈夫!?」
「私が拭くから、自分の服乾かしな」
「梨加ちゃん、ドジだね。服拭いたげる!」
ポンコツぶりに慣れてきたメンバーたちが皆して、彼女の身の回りのお世話をし始める。そう、お姫様のように扱っているのだ。
世の中は結局顔だなと思った。私たち全員を映している壁の鏡を見ると、周りの女の子が可愛くて私は自信をなくしてしまった。アイドルグループなので可愛い子が集まるという、当たり前すぎる掟に私は凹んでしまった。
「やだ! 私、理佐ちゃんの側にいたい!」
「うるさい! なんでこっち来るの? 謝って!」
なんだか女王様と下僕のようなやり取りが聞こえた。
原田葵。15歳。彼女は自分と同じ高校生には見えないくらい幼かった。小学生と弄られているが無理もないと思った。いや、我々が老けすぎてるだけなのか。番組ではあまり伝わらないかもしれないが、結構しっかりしている面もある。
渡邉理佐。17歳。最初は大人しくて地味な子だと思ったが、ショートカットにして美少女へ変貌を遂げる、嬉しい誤算が生じた。かなりの美形なのに、笑う顔はとても可愛らしく、多くの女性のハートを奪っていた。私もその一人だった。ショートカットにして正解だと思う。あと、番組ではあまり伝わらないかもしれないが、見た目に反して結構幼い面もある。
皆のソフトドリンクがそろそろ底を尽きだした頃、スタッフたちがウェイターを呼んでなにかを頼んでいる姿を横目に、温くなったコーラを飲み干した。