ヴァージン

 Mステ以降、仕事が怒涛のように押し寄せてきた。悩む暇すら与えてくれないほど、めまぐるしい日々が続く。私は欅坂46の露出が増えていくほど、心の安定を欠いていくのを感じた––––。

 

 休日の昼過ぎ。寮の皆は久々のオフということで、羽を伸ばしに出かけている。宿題が山積りだった私は、今こうして留守番している。山積みになっているプリントやドリルとにらめっこしてるばかりで、鉛筆が進まない。
 気付かぬうちに心身を消耗してきた今、とにかく心身を休めたい気分だった。そういえば、今日は梨加ちゃんも留守番のはずだ。彼女のことを考えたら恋しくなってしまい、LINE画面を開く。お気に入りに登録している彼女の連絡先をタップして、トーク画面を開く。

「会いたい」

 送って一分も経たずして既読がつく。

「今、行くね」

 返信メッセージの下には、可愛らしいジンベイザメのスタンプが添えられていた。小走りで部屋のドアの鍵を開け、すぐベッドに戻って寝転がる。ほどなくしてインターホンの音が鳴った。

ピンポーン

 LINE通話のボタンをタップすると、すぐに出てくれた。スマホのマイクに向けて話す。

「開いてるよー、ドア」

 くすくす笑う声とともに「入るね」と返ってきた。ドアが開かれると、スマートフォンを耳に当ててにこやかな顔をしている梨加ちゃんが出てきた。私を見るないや、「あー」と指差している。

「梨加ちゃん、こっち来てー」

 スマートフォンを耳に当てたまま、空いてる手で広げる。

「うふふっ、子供みたいー」

「子供だもーん」

 梨加ちゃんはゆっくりとベッドに腰掛けると、私の胸あたりに寝るように顔を乗せてきた。優しい目で微笑んできている。彼女は言わないとしてこない。付き合ってる今も、私がリードする側だった。

「キスして」

 通話しながら、梨加ちゃんにおねだりする。彼女は照れ笑いを浮かべながら、ゆっくりと私との距離を縮めて唇を重ねてきた。互いに通話を切ってキスに集中する。

「今日は甘えん坊だね」

「いつもだし」

 再度、キスをねだるように唇を突き出す。梨加ちゃんはふふっと笑い声を漏らしながら、私の頬に手を添えて唇を重ねてきた。唇を合わせたまま梨加ちゃんの首に手を回して、今度は円滑に舌を侵入させることに成功した。梨加ちゃんの方もすんなりと受け入れてくれている。互いに舌を回したり、吸ったりして、唾液を交換する。
 以前は梨加ちゃんのペースだったが、今回は私もリードするように応戦した。

 この瞬間がなんともいえない心地よさだった。現実と遮断して夢におでかけしているような、そんな感覚だった。
 梨加ちゃんとのキスは現実を忘れさせてくれる––––。

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