念願のMステの出演も決まり、アイドル活動は順風満帆だった。
(少しの油断が命取りになる。初心を忘れず、ちゃんと気を引き締めなきゃ––––)
精神を集中させる傍らで、ふあぁぁと思いっきり欠伸をして眼を滲ませている間抜けな同期……志田。もはや見慣れた光景ではあったが、どうしても絶句せずにはいられなかった。
初めてのMステは、きゃりーぱみゅぱみゅや、三代目Soul Brothersと、ポピュラーなアーティスト揃いで、それがかえって気合が入るのであった。タモリさんを間近で見ると、自分は今、Mステにいるんだなぁと実感する。
欅坂46の番が来て、同時にグループの紹介ビデオが流れる。そこであることに気付いた。平手ばかりに焦点を当てているということに。
〝カッコいい14歳のセンター誕生!
「カッコよすぎる…なんだあのセンターの凄さっ!」「平手が超カッコいいの!」
話題のカッコいいセンター、平手友梨奈(14歳)––––〟
内心に嫉妬を覚えながらも、笑顔を絶やさない。
(Mステはワイプに抜かれることもある。悔しさを顔に出すようじゃプロ失格だゾ)
タモリさんが〝話題のカッコいいセンター〟平手に問いかけてくる。
「14歳?」
「はい」
「中学?」
「3年生です」
「3、4年前まではランドセル背負ってたんだよね?」
(驚くのも無理もないよね。ここまでオーラを放つ中学生なんて、どこ探しても平手以外有り得ないんだから)
アナウンサーがやや興奮した喋り方で言う。
「2001年生まれ、21世紀のセンターです!」
「ついに超えたかぁ。 それでは参りましょう」
「欅坂46で、デビュー曲、サイレント・マジョリティー!」
私たちの出る幕はないに等しかった。世間の評価は以下の通り。
〝平手と愉快な仲間たち〟
Mステ出演前、平手が最近つけ始めたネックレスをぎゅっと握りしめている光景を思い浮かべる。そのネックレスに例えるなら、タツノオトシゴが平手で我々はタツノオトシゴを引き立てる役のヒトデとパールなのだ。
Mステの後、twitterのトレンドが「センターの子」「平手さん」で埋まっていた。「欅坂46」より上に来ているのが、なんとも複雑な気分にさせる。
録画していたMステを見返すと、テロップも「最年少14歳センター平手に注目のグループ」のような煽り文句ばかり。カメラに映っている平手の傍らで見切れてるだけの私。Mステに限らず、他のメディアでもこのような扱いだった。
(ねぇ、平手。サイレントマジョリティー披露の時、私がどんな気持ちで踊っていたか知ってる?)
悔しかった。そして、情けなかった。自分の非力さに嘆くばかりである。
(いいわ。今は、引き立て役に甘んじてあげる。でもいつか、追いつくから。というか、追い越すから!)
絶対に〝平手と今泉と愉快な仲間たち〟と呼ばれるようになってやる––––