小説家からの贈りもの

風呂場で汗とともに雑念を流そうと強めのシャワーを浴びる。隣に座ってきた織田に目をる。
髪の毛をまとめており、剥き出しのうなじには玉のような汗粒を浮かばせている。それがうなじから、背中へ、お尻へとなぞるようにしたたっていく。色っぽい後ろ姿に目が釘付けになってしまう。
禁欲状態の獣が、裸の恋人を前にして理性を保てるはずがなかった。

「うぉっ!」

織田の裸を見てたかぶった私は、とうとうおおやけの場で彼女を押し倒してしまった。同性同士、裸で重ねている現場を目撃されたら間違いなく変質者扱いだ。
自我を忘れてしまうほど、目先の衝動に駆られて犯そうとするなんて。はしたない真似をしているとは自覚しつつも、止まらない。

「だにー、私、私……も、もう……」

驚きで半開き状態の唇を奪おうとした、その矢先だった。
ガラッと勢いよく戸の開く音に、驚いて顔を上げると、仲居さんが驚いた様子で駆けつけてきた。

「ちょっと! 大丈夫なの?」

この事態を想定しなかった私は狼狽ろうばいのあまり、言葉がうまく出てこなかった。

「あはは、ごめんなさい。ふざけてたら滑っちゃって」

機転をかせた織田が返答する。この時ばかりは彼女の頭の回転の速さに感謝した。

「そうですか。気を付けてください。下手したら怪我しますので」

徐々に冷静を取り戻して辺りを見回すと、へだてる壁は全てガラス張りで外からは丸見えだった。全身ずぶ濡れの汗が一瞬にして冷えていく。
身体を起こした私たちは無言のまま、汗を流した。クリスマスデート早々、ヘマをやらかしたことに激しい自己嫌悪を覚えるばかりだ。

 

 

近くに蒸し風呂と同じ要素で、蒸し料理を出している飲食施設があり、そこで軽めの食事を頂くことにした。そこには注文した食材をセルフで蒸し料理を作る名物コーナーがあった。
これは特技が料理である私の出番だ。ところが、野菜をこぼしたり、熱いまま素手で触って火傷してしまうという、特技欄の料理の文字を二重消しするような失態を犯していた。これじゃ、いやしい内面を暴露しているようなものじゃないか。
なんやかんや出来上がった蒸し料理を頂いたものの、味が分からない。さきほどの強烈すぎる映像が脳内を占領していた。

(ああ、だにー! だにー! だにーってば! したい、したいよ!)

頭の中でおそろしく卑猥ひわいなことを何度も呟いた。はっきりいって、頭がいかれていた。いよいよ、おかしくなりそうだった。この興奮をしずめる方法はただひとつ。織田と身体を重ねるしかない––––。

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4件のコメント

  1. いつも読ませていただいてます!
    寝る直前に読んで目が冴えました笑
    自分が見つけられてないだけかもしれませんけど、オダナナの裏って意外と(?)少ないのでめちゃ嬉しいです笑

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    1. >risco さん
      はじめまして!
      あらあら……寝不足にさせちゃってごめんなさい♡フヒヒ
      確かにオダナナの裏あまりないですよね!と自分も思ったので、今回書かせて頂きました!喜んで頂けたなら光栄です。
      引き続き、宜しくお願いします(^^)

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  2. いつも読ませていただいてます。
    『もう他の男性の躰では満足させないように、彼女を情慾を火だるまにする—-』この一文に痺れました!
    歪んだ深すぎる愛、良いですね。
    それもまたオダナナとスズもんらしいかなと。
    最高な作品をありがとうございます‼

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    1. >sysm さん
      いつもありがとうございます。

      あああ、それはですね。実は、作中ですずもんが音読している文は実在している官能小説から引用しているんですね。とはいえ、丸ごとは流石にマズイのでちょこちょこいじってはいますが。・・・ということで、いずれ自分も痺れるような文が書けるように精進します!

      歪んだ愛が好みでしょうか?実はそのネタも温めてあります!いつかは出しますので、その時はぜひ、悶えてくださいませ♪
      ありがとうございます、そう言っていただけるなんて光栄です!

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