小説家からの贈りもの

目から覚めると、織田が私を愛おしそうに抱きしめていた。私は呼吸を整えながら、織田の目を覗き込んで訊いた。

「私のこと、好き?」

織田は白い歯を見せて「もちろん!」と、答えた。

「誰にも渡したくないくらい好きだよ」

嬉しくて涙が滲む。しかし、その言葉には矛盾がある。

「え、でも……他の男に抱かせたりしてたじゃん」

「うん、そうねぇ」

「もしかして、独占欲ないとか?」

「ううん、全然独占欲あるよ!」

ますます謎が広がるばかり。やはり、織田の作品は読めても心は読めない。顔に困惑の色が広がっている私に、織田は続けた。

「美愉の心だけは独占する。心まで他の人に行っちゃったら嫉妬しちゃうよ」

心のわかだまりが、解けていった。私は「愛されていない」のだと、意味もなく胸を痛めていたのだ。

「私、好きな人には望むことはなんでも叶えてやりたい人なんだよね。知ってた?」

などと、織田はどや顔を浮かべている。

「変なの」

(本当に変なの––––)

恋人は計算などなく、ただ単に私以上の奉仕体質らしかった。今回のセックスはかなり刺激的だったが、他の男に抱かれているのを見られるプレイはもう御免ごめんだ。

「でも、他の人とセックスは嫌だ。織田と、したい」

「あら、興奮しなかった? それにしても可愛いこと言うよねえ」

私の一言が刺激になったのか、私をぐいっと強引に立たせた。

「びしょびしょの体、温泉で綺麗にしなきゃ」

快感が抜けきっていないのか、足元がおぼつかない私を抱えながら、風呂のところまで歩いて戸を開けた。湯煙が私たちを覆い包む。

「夜はまだ長いよ」

私は息を切らせながらおぼつかない手つきで織田の着崩れた浴衣を剥ぎ取る。織田は「盛りすぎだって」と笑いながら大人しく脱がされていた。

「鈴本をモデルにした小説いっぱい書くんだから–––––」

織田は私の頭を抱き寄せて、耳元で囁いた。

ガンガン抱くからよろしくね––––

私は随喜ずいきの涙を流しながら、織田と共に立ちめる湯煙の中へと消えていった。

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4件のコメント

  1. いつも読ませていただいてます!
    寝る直前に読んで目が冴えました笑
    自分が見つけられてないだけかもしれませんけど、オダナナの裏って意外と(?)少ないのでめちゃ嬉しいです笑

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    1. >risco さん
      はじめまして!
      あらあら……寝不足にさせちゃってごめんなさい♡フヒヒ
      確かにオダナナの裏あまりないですよね!と自分も思ったので、今回書かせて頂きました!喜んで頂けたなら光栄です。
      引き続き、宜しくお願いします(^^)

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  2. いつも読ませていただいてます。
    『もう他の男性の躰では満足させないように、彼女を情慾を火だるまにする—-』この一文に痺れました!
    歪んだ深すぎる愛、良いですね。
    それもまたオダナナとスズもんらしいかなと。
    最高な作品をありがとうございます‼

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    1. >sysm さん
      いつもありがとうございます。

      あああ、それはですね。実は、作中ですずもんが音読している文は実在している官能小説から引用しているんですね。とはいえ、丸ごとは流石にマズイのでちょこちょこいじってはいますが。・・・ということで、いずれ自分も痺れるような文が書けるように精進します!

      歪んだ愛が好みでしょうか?実はそのネタも温めてあります!いつかは出しますので、その時はぜひ、悶えてくださいませ♪
      ありがとうございます、そう言っていただけるなんて光栄です!

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